最近は、こちらの説明に納得せずカルテ開示を請求してくる患者さんがいます。先日も、咬耗で前歯の切端が変形しているのを、「歯科衛生士が超音波で削ったせいだ、大学病院で診てもらうからカルテを出せ」というのです。前歯の切端など衛生士が触るわけがありません。どうすれば良いのでしょうか。

カルテ開示は、歯科医師法に基づく「診療情報の提供等に関する指針」が定められており、患者さんからカルテ開示を求められた場合は、原則として応じなければなりません。

しかし、カルテのコピーを求められるケースの大部分は、患者さんとの信頼関係が崩れた状態であることが多く、カルテのコピーを保健所に持っていかれる可能性もあります。

また、ちょっとカルテを見せてくれと患者さんに言われて、見せたらスマホで撮影されたというケースもあります。うっかり見せることができないのです。

つまり、保健所に持ち込まれ、個別指導に耐えうる状態にしておかなければ、コピーを渡したり、見せたりできないと考えておく必要があるのです。

また、カルテは診査診断処置をした歯科医師の個人情報であり、開示にあたっては担当歯科医師の承諾が必要になります。担当していた勤務医が退職している場合は照会に時間を要することになります。

また、患者さんの配偶者や息子さんなど本人以外からカルテ開示請求を受けた場合も困ります。歯科医師には高度な守秘義務があり、カルテは患者さんの個人情報であり、診断や処置を行った歯科医師の個人情報でもあるからです。


このため、きちんとしたカルテ開示請求の手続きを定めておく必要があります。 前述の指針では、カルテ開示手続きとして次の5つを定めることとしています。

①カルテ開示の申請書を定める
申請書の様式を定めておき、申請者が本人以外の場合は、患者さんと申請者の関係、本人確認ができる書類などを添える。

②カルテ開示の料金を設定する
カルテ開示の手数料は「診療情報提供料のⅡ」の10割負担で、一通について5,500円(税込)とします。さらにコピー代などの実費を徴収します。

③カルテ開示の時間を確保する
カルテの妥当性を判断し、個別指導に耐えられるレベルまで、レントゲンなど資料やコメントを追記し、開示できる状態にする時間を確保する必要があります。

④カルテ開示の妥当性を判断する
カルテは診断を行った歯科医師の個人情報でもあるため、担当医の承諾が必要です。開示の妥当性については、担当医だけの判断ではなく、医院としての判断が必要です。幹部会や医局会で検討する必要があります。

⑤カルテ開示の院内規定を定める
カルテ開示手続き、料金、準備時間、妥当性を判断する機関などを決めておきます。

カルテ開示請求は、患者の権利とされており、原則として断れません。しかし、激高した患者さんに渡すことで、新たな問題が生じてしまうリスクがでてきます。

このため、公正な手続きや手数料を定めておき、これを歯科医師や受付スタッフが丁寧に説明することで、激高した患者さんからのカルテ開示請求を少なくすることができる可能性があります。

また、カルテ開示の手続きと料金を定めておくことで、何らかの理由で病名や症状を確認したい遺族や家族の要望に応えることも可能になります。ぜひ、カルテ開示の手続きを定めておきましょう

以上