1.はじめに

2026年10月1日の「パートタイム・有期雇用労働法」の改正で、パート・有期雇用労働者を雇い入れる際の労働条件明示事項に、「正社員との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」が追加された。違反には10万円以下の過料の規定もある。

そこで、改めて確認する必要があるのが、「同一労働同一賃金」である。
例えば、歯科医院では「賞与はパートだから対象外」という医院が多いが、そのままでは通用しにくくなっている。また、退職金も「パートタイマーは退職金の対象外」としている医院が大部分と思われるが、今回の改正で正社員との待遇差を合理的に説明できるようにする必要がある。


2.注意したい「賞与」と「退職金」

今回の改正で特に注目したいのが賞与と退職金である。賞与には、毎日の仕事および業績に対する褒賞という目的があり、退職金には医院への永年の貢献に対する功労報償の目的がある。
しかしそれは、パート・有期雇用職員にも当てはまる場合がある。今回のガイドラインでは、「正社員の人材確保・定着のため」という目的だけでは、正社員とパート・有期雇用職員との待遇差が説明できないとされている。

「正社員を採用するのが難しいので、正社員だけ住宅手当を付けている」、「常勤歯科衛生士を定着させるため、常勤だけ賞与を支給している」という医院が多いと考えられるが、今回の改正により、待遇差を設ける理由には人材確保の必要性だけでなく、仕事内容、責任、勤務時間、異動の可能性なども含めて説明できるようにしておく必要がある。

ただし、今回の改正は「パート・有期雇用職員にも正社員と同様に賞与や退職金を支給しなければならない」という意味ではない。また厚生労働省は、不合理な待遇差を解消するためには、正社員の待遇の引き下げではなく、パート・有期雇用職員の待遇改善によって解消するように求めている。


3. 正社員とパート・有期雇用職員の「待遇の違い」の合理的な理由を考えておく

今回の改正で求められているのは、「パートだからゼロ」ではなく、「なぜその差があるのか」を説明できる制度になっているかどうかである。賞与と退職金だけでなく各種の手当についても同様である。重要なのは、「〇〇手当」という手当の名称ではなく、「その手当を何のために支給しているか」である。

例えば、住宅手当や家賃補助を地方出身の正社員の単身者や分院間の配置転換を命じた正社員に支給している医院は多いが、地方出身の単身のパート・有期雇用職員や、転居を伴う配置変更をさせたパート・有期雇用職員がいれば、同様に住宅手当や家賃補助を支給する必要がある。多くの場合、正社員とパート・有期雇用職員には、勤務時間や職務内容、責任の程度や配置転換の有無などに違いがある。それを明確に説明できるようにする必要がある。

考えられる理由を列挙すれば、①責任の程度の違い、②代務・欠勤者対応の違い、③業務範囲の違い、④配置転換の有無の違い、⑤勤務上の柔軟性の違い、⑥管理・指導責任の違い、⑦医院全体への貢献度の違い、⑧将来の役職への登用についての違い、⑨長期的人材活用の面での違い、⑩その他正社員に求められている権限と義務、などである。これらの理由を賞与や退職金、その他の手当ごとに整理しておくことが必要である。


4. まとめ

同一労働同一賃金が実現され、同じ医院で働くスタッフが「自分の働き方や貢献が公平に評価されている」と感じられる制度にすることは、人材確保、採用と定着という経営課題の解決に直結する。今回の改正の趣旨に沿って、歯科医院でよくある、「正社員にはあるが、パートにはない」という手当は、その目的や格差の理由を説明できるようにする必要がある。

なお、パート・有期雇用の改正後のモデル労働条件通知書が厚生労働省のWEBサイト「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」で公開されている。参考にしていただきたい。          

以上