■はじめに


令和8年3月27日に、厚生労働省から、保険診療でキャンセル料を徴収できると読める通達がでました。
しかし、5月29日に、選定療養における予約に基づく診察に限られると修正され、医療界に大きな混乱が広がりました。

この通達で明らかになったのは、直前キャンセルに悩まされている医療機関が多いということです。特に、予約制で運営している歯科医院にとって、直前キャンセルの減少は重要な経営課題です。
今回は、キャンセル対策について考えてみましょう。


■ 「キャンセル対策」は「良い患者さんを大切にする医院文化」を作る取り組み


無断キャンセル対策は、キャンセルによる機会損失を補填するためのものではなく、“良い患者さん”を守るための経営戦略です。

どの医院にも、時間通りに来院する、定期メンテナンスに通う、自費治療に価値を感じてくれる患者さんがいます。一方で、無断キャンセルを繰り返す、毎回遅刻する、痛みが出た時だけ来院する、自己中心的なクレームが多い患者さんも存在します。問題は、多くの医院が後者に振り回されてしまうことです。

無断キャンセル常習者のために、「あえてダブルブッキングをしておく、遅刻しても診療する」という対応を続けるとどうなるでしょうか。結果として待たされるのは、時間通りに来院した優良な患者さんです。

そして、「予約制なのに毎回待たされる」と感じた患者さんは静かに医院を離れていきます。つまり、「悪い患者を守ろうとして、良い患者を失う」という現象が起きるのです。


■ キャンセルを防止するシステムを作る


まず行うべきなのは、キャンセルを防止するシステムを院内に構築していくことです。

① 治療の重要性を伝える
患者さんは、「その日の予定の方が、治療より大切」と思うから予約変更をします。逆に、根管治療を中断するとどうなるかなど、治療の重要性と延期するリスクを理解するとキャンセル率は下がります。

② 「人が待っている」ことを伝える
「私がお待ちしています」「当日は先生とスタッフがお待ちしています」という一言です。患者さんに、「自分のために人が時間を確保している」という認識が生まれ、「キャンセルすると申し訳ない」という感情が働きます。心理学的には非常に有効です。

③ リマインドシステムを整備する
無断キャンセルの最大原因は「忘れていた」です。そのため、SMS、LINE、リコールハガキ、歯科衛生士からの電話などのリマインドが有効です。リコール率が大きく変わります。

④ 無断キャンセル3回で予約停止
私のクライアント歯科医院では、「無断キャンセル3回で予約停止」という明確なルールで運営しています。重要なのはルールを明確にして厳格に運営することです。キャンセル常習者に遅刻常習者、クレーマーなど自己中心的な患者が含まれるので、次第に良い患者さんが残ってきます。

⑤ キャンセルポリシーの説明と同意書
初診カウンセリングで、「無断キャンセル3回で予約停止」などのキャンセルポリシーを説明してサインをいただきます。変な患者が離脱していき患者層が次第に変化します。


■まとめ ~これからの歯科医院経営に必要な考え方


キャンセル対策は、「良い患者さんを大切にする医院文化」を作る取り組みです。「患者満足度」という言葉がありますが、すべての患者さんの要望に応えることが患者満足度向上ではありません。むしろ、きちんと来院する患者さん達が快適に通院できる環境を作ることこそ、本当の患者満足度向上と言えるでしょう。

キャンセル率の低下は、その結果として現れる経営改善指標に過ぎないのです。だからこそ院長先生には、もう一度問いかけたいと思います。「本当に、良い患者さんを大切にしていますか?」  

以上