先日クライアント医院で、チーフ達がある勤務医の先生が臭いというのです。軽い腋臭があるらしく、特に寒くなってきてから臭うとのことでした。なかにはアロマキャンドルをチェアサイドに置く歯科衛生士も出てきたそうで、どうすればよいかと相談を受けました。

 これが、スメルハラスメント。つまり臭いによって他人を不快にさせる被害です。実は、冬場にかいた汗のほうが、成分が濃いために臭いやすいのです。しかも今はスクラブを着用している医院が多く、体臭が外にでやすくなります。では、どうすればよいでしょうか。スメハラといっても色々あります。今回はその対策を考えてみましょう。

 体臭は、白衣を変えることで多少は避けることが可能になります。ケーシータイプの白衣は、首に襟が立っているので、スクラブよりも体臭が表にでにくくなります。また、Yシャツとネクタイを着用しても、体臭が外にでにくくなります。この場合は、必ず肌着を着用してもらいます。肌着が汗を吸収するので、体臭が表にでにくくなるからです。

 そして本人には、体臭があるので対策を講じるように伝える必要があります。ところが、これが意外に難しいのです。以前、クライアント医院で在宅歯科診療をしているスタッフを面談した際、同行する歯科医師の体臭で毎日気が狂いそうになるぐらい辛く、辞めようと考えているということでした。その先生は40代なかばの歯科医師で、私が普通の距離で話していると感じない程度でしたが、軽自動車のなかで一日中一緒にいると臭いがこもるということでした。そして、いざ彼に話す段になって院長と2人で困ってしまいました。プライドを傷つけずに、明日から実行してもらえるようなアドバイスをどうすればよいか迷ったのです。「あなたが臭くて、スタッフに迷惑をかけている」ということを彼の自尊心を傷つけずに伝える必要があるからです。彼を呼び出して、女性スタッフがスメハラを訴えてきたことを伝え、男性のたしなみとして朝シャワーを浴び、デオドラント剤をつけて出勤するようにアドバイスしたのですが、その先生は自分が臭うと言われたことに対して驚き、反論してきました。自分が体臭で迷惑をかけているということは、男性にとってもそのぐらい受入れられない事実なのです。

 次は女性の事例です。ある歯科医院に20歳の受付さんが入ってきました。ところが、受付の先輩が、彼女が来てからカウンターのなかが臭うというのです。どうやら軽い腋臭があるようでした。本人は全く意識しておらず、屈託なく笑顔で受付業務を行なっています。さて、彼女に対してどう伝えれば良いか困りました。そして、院長や受付主任、そして弊社の接遇アドバイザーと受付主任から女性同士で伝えてもらうようにしました。内容は、前述の訪問歯科のドクターに対してアドバイスしたときのように、シャワーを浴びて出勤すること、デオドラント剤や除菌ができる制汗剤、クリームなどを使うことなど具体的な対策です。そして彼女を呼び出し、アドバイスしたところ、彼女は「ありがとうございました。知らずにいたら、とんでもない恥をかきつづけるところでした」と感謝してくれたのです。

 スメハラは、誰もが加害者になる可能性があります。自分自身についても見直してみましょう。腋臭や加齢臭は治るものではありません。日頃から対策をしておきましょう。    

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