今回の診療報酬改定で「歯周病重症化予防治療」が新設される。これは、SPTの算定回数が当初予測を大幅に超えたほか、保険の「定期健診」として定期的に初診算定を繰り返す医院が多く、指導監査で指摘される事案も多いためとみられる。概要は次のとおりである。

[新設]  歯周病重症化予防治療

1.1歯以上10歯未満 150点、 2.10歯以上20歯未満  200点、3.20歯以上  300点

[対象患者]①歯科疾患管理料又は歯科疾患在宅療養管理料を算定している患者で、2回目以降の歯周病組織検査終了後に歯周ポケットが4ミリメートル未満の患者。 ②歯周組織の多くの部分は健康であるが、部分的に歯肉に限局する炎症症状を認める状態又はプロービング時の出血が見られる状態。

[算定要件] ①2回目以降の歯周病検査終了後、一時的に病状が改善傾向にある患者に対し、重症化予防を目的として、スケーリング、機械的歯面清掃等の継続的な治療(歯周病重症化予防治療)を開始した場合は月1回に限り算定する。②2回目以降の歯周病重症化予防治療の算定は、前回実施月の翌月の初日から起算して2月を経過した日以降に行う。③歯周病安定期治療Ⅰ又は歯周病安定期治療Ⅱを算定した月は算定できない。

   この結果、予防処置のメニューが増えることになる。具体的には次のようになるだろう。

問題は、3の「従来の歯周基本治療の繰返し」で、今後は3ヶ月~6ヶ月ごとに初診算定を繰り返すと返戻や指導監査が避けられないだろう。患者都合による治療中断として再診で算定するのが妥当と考えられる。

経営の観点から、歯周病重症化予防治療のチェアタイムと処置内容、そして売上を考えてみよう。チェアタイムは30分で上下全顎のSCを一度に行なうことになるだろう。点数は、20歯以上は300点で、再診料53点、実地指導80点を合計すると、433点になる。1日に5時間、10人の処置で4330点/日、22日稼働では月に9万5260点になる。SPTの患者も交えると歯科衛生士1人10万点程度の売上げは可能だろう。

これまでSPTを算定していた医院では、SPT患者に対して慢性的歯周炎としてポケットが4㎜未満になるまで継続して算定できるので大きな変化はおきないとみられる。むしろ、これまで窓口負担が大きくなるのでSPTⅡを避けていた患者に対して歯周病重症化予防治療を適用することで、定期的に来院する患者を増やすことができ、医業収入を増やせる可能性がある。これまで「保険の健診」として歯周基本治療を一定期間ごとに繰り返していた歯科医院は減収になるが、 これまで2~3度のチェアタイムを要していた処置が1度で終了するためチェア効率が向上する。窓口負担も3割負担で1300円低度なので多くの患者の来院が見込めるだろう。

歯科医院の競合が激化するなかで、一定の患者が継続的に来院してくれれば医院経営の安定化につながる。さらに、定期的な来院によって口腔管理の知識が増えた患者は、自費治療を選ぶ傾向が強くなることが知られている。これらを総合すると歯科医院経営の改善につながる可能性がある。さらに、糖尿病などの成人病の引き金となる歯周疾患の患者数が減少することで国民医療費全体の削減につながる可能性もあるだろう。ぜひ、この機会を前向きに捉えていただきたいと思う。

以上