1.はじめに

歯科医院でも、患者さんからの暴言、威圧的な態度、過剰な要求などに悩まされるケースが増えている。こうした状況から、令和8年(2026年)10月1日から、事業主にカスハラ防止のための措置を講じることが義務付けられた。

歯科医院は一般企業よりもカスハラが起こりやすい。例えば、「痛い」「腫れた」「治らない」といった身体的な苦痛や、「治療費が高い」「予約が取れない」「待たされた」といった不満に加え、治療結果に対する患者さんの期待と実際の結果とのギャップなどが、トラブルの原因になりやすいからである。このため歯科医院でも、「カスハラからスタッフを守る仕組み」が必要である。


2.カスハラとは何か

患者さんからの苦情やクレームがすべてカスハラに該当するわけではない。次の3つのチェックポイントを確認する必要がある。

①医院側に問題がなかったか
②患者さんの要求に合理性があるか
③要求の方法が社会通念上許容できるものか

その結果、医院側に落ち度があれば丁寧に謝罪して改善する必要があり、患者さんに誤解があれば丁寧に説明することが必要である。それでも暴言、脅迫、長時間拘束、不当な要求などが続く場合は、カスハラとして、警察に通報したり、弁護士に相談したり、医院としての組織的な対応に切り替えるのである。

政府広報WEBサイトでは、カスハラの内容は、「継続的な、執拗な言動」が72.1%、「威圧的な言動」が52.2%となっている。また、カスハラの原因は、「顧客対応・サービス対応等の遅延」が71.2%、「対応者の説明・コミュニケーションの不足」が63.6%となっている。

つまり、「待たされた」「説明がない」、などの不満がカスハラのきっかけになっているのだ。歯科医院では、「忙しいから」といって患者さんに「雑に扱われた」と感じさせるなど、歯科医師やスタッフの態度や言葉遣い、説明などに問題があるケースが起きがちである。

逆に、「丁寧に傾聴してくれた」、「分かりやすく説明してくれた」、「笑顔でやさしく処置や対応をしてくれた」など、患者さんが「自分を大切に扱ってくれた」と感じれば、逆に感謝の気持ちを持ってお帰りいただくことができる。そのためには、「その対応で相手がどう感じるか」ということを予見する能力と、日頃からできるだけ丁寧に対応する心がけが大切である。それには、日ごろの歯科医師や、歯科衛生士、歯科助手、そして受付スタッフの、接遇の改善が重要である。「患者さんが言葉に出さない小さな不満や不安を減らすこと」が重要なカスハラ予防策になるのだ。


3.歯科医院での対策

歯科医院では次の対策が必要である。

①カスハラに対する医院の基本方針を定める
毅然と対応し、歯科医師やスタッフを守ることを基本方針として確認しておく。さらに、予防対策として丁寧な傾聴と説明を重視すること、日頃から接遇を改善することなども決めておく。

②カスハラ対応マニュアルを定める
カスハラは一人で対応せず、だれかが駆け付けて2人以上で対処すること、暴言や暴力行為はすぐに警備会社や警察に連絡することなどを決めておく。

③院内相談窓口の設定
カスハラ相談窓口を院内に設置し、カスハラが発生したら、院長や主任に相談することを定めておく。

④カスハラ発生時の記録
カスハラの発生時は、防犯カメラまたはスマホで動画を撮影し、発言内容を録音しておく。そして5W1Hで記録を残す。

⑤警告ポスターの院内とWEBサイトへの掲示
カスハラ対策のポスターを待合室、診察室、WEBサイトに掲示しておく。

⑥スタッフのカスハラ対策研修と接遇訓練の実施
カスハラに発展させないように、万一の場合のロールプレイと、歯科医師とスタッフの接遇訓練をしておく。


4. まとめ

患者さんに安心して歯科医療を受けてもらうこと、歯科医師やスタッフに安心して働いてもらうこと、この両方を実現するために、カスハラ対策を定めて、医院で共有しておきたい。          

以上