1.はじめに

 歯科医師数が減少し始めています。2022年の歯科医師数は105,267人で、2020年の107,443人より2,176人減少しています。

2.歯科医師減少の要因は高齢化

 図表は、2020年と2022年の歯科医師数の増減を4倍して、2030年の年齢階層別歯科医師数を予測したものである。2030年の総数は、約93,000人で2022年から2030年の間に△約8,800人が減少する。2022年は60歳代と50歳代が多いが、2030年には60歳代が約25,000人と最大の年齢層になる。そして、70歳以上の歯科医師数が約17,000人になり50歳代を上回る。彼らが75歳でリタイアするとすれば、5年間で毎年3,400人の歯科医師が退場することになる。国家試験合格者数は毎年約2,000人であり、歯科医師数の減少が加速する。

3.歯科医師減少政策が続いている

 文部科学省と厚生労働省は歯学部定員削減策を継続している。第117回歯科医師国家試験の受験者数は3,117人、合格者数は2,060人で合格率は66.1%であった。将来の歯科医師不足が予想されるなかで、緩和時期を見定める必要があると考えられる。

令和6年の歯学部入試は、国公立歯学部は平均倍率3.39倍で定員を充足したが、私立大学歯学部の平均倍率は1.98倍で、うち9校が定員割れとなった。国家試験の合格率が厳しくなった結果、私立大学全体で41.2%の学生が6年生で留年・休学しており、これが私立大学歯学部の不人気の要因になっていると考えられる。

4.歯科医師数の減少とその対策方向を考える

 私見であるが次のような対策が考えられる。①公立歯学部の定員削減をやめる。これで毎年298人が増える。国公立を志望する学生は比較的優秀な学生が多いと推測され、歯科医師のレベル低下につながらないと考えられる。②国公立大学歯学部地域特別枠を設定することが考えられる。北海道大学と東北大学に、北海道と東北四県の自治体や医療生協などの歯科診療所に何年か勤務することを条件として定員を増やす。③私立歯学部の門戸を広げる。教員や教育設備への投資が必要になるが、人気私立大学は優秀な学生の入学が増えると考えられる。④卒業できない学生のためのセーフティネットとなる歯科関連学部を設立する。例えば、歯科衛生士と歯科技工士のダブルライセンスを取得できる4年制の「保険衛生技工学部」や、ITを歯科医学に活用する「歯科情報工学部」を作る。複数回留年して卒業の見込みが低い学生を転部させる。その学生は「学士号」を得て企業や公務員として就職できる。歯科衛生士と歯科技工士のダブルライセンスを取得できるなら、最初から歯科関連学部をめざす学生も入学してくると考えられる。その結果、歯学部をめざす優秀な学生が増え、歯科医師不足が緩和されるのではないだろうか。

以上