どの歯科医院でも日常的に起きているトラブルがあります。それは、「使おうと思った時にモノがない!」です。例えば、電動麻酔装置が行方不明、バースタンドにバーが戻っていない、超音波のチップが見当たらない、など色々なモノが行方不明になっています。すぐに見つかればよいのですが、ない場合は隣のユニットから拝借したり、その処置を次回に延期したりすることになってしまいます。今回はその対策を考えてみましょう。

診療効率を維持するためには、「あるべきところに、あるべきモノがきちんと保管されていること」が重要です。そのためには、次の3つの改善方向があります。

1.十分な数を用意する:ユニット台数と、歯科医師、歯科衛生士の人数を考慮して器具を増やす必要があります。例えば、バーは並べ方も決めて滅菌できるセットにしておき、1日の患者数と滅菌回数に合わせてセット数を揃えておきます。セメント類は、各ユニットに同じモノをセットしておきます。比較的よく使う器具は各ユニットのキャビネットに一つずつ入れておき、消毒室に滅菌済みの予備を必要数置いておきます。こうすれば毎回探すことがなくなります。歯科用器具は高価ですが、探す時間に費やす無駄な人件費を考えると、投資額は回収できます。

2.収納場所に目印を付ける:例えば、診療中に新人が寄ってきて、「カルシペックスはどこにありますか?」「それは消毒室の上の棚よ」、こんなことが起きていませんか?モノの保管場所を把握できていない人は、出したモノを元の位置に戻せなくなる可能性があります。戻す場所が分からず、時間に追われて適当に戻してしまうと、隠したのと同じ結果になってしまうのです。

対策として、 収納場所に内容を表示しておく方法があります。キャビネットの引き出しや消毒コーナーの棚に、何が入っているか名前を書いたシールを貼っておくのです。新人の助手は器具の形と名前が分からないことがあるので、デジカメ写真を貼っておくと親切です。

3.「元の位置」を使いやすい場所にする:歯科医師もスタッフも適当にモノを放置してしまいがちです。でもよく見ているといつも同じ位置にモノが出しっぱなしにされているようです。つまり、「ちょっと置きやすい」ので、「そこにあると使いやすい」ので、その場所に置いてしまうのです。そうであるなら、そこに置き場所を作れないか工夫してみましょう。「モノの定位置は、使う場所のすぐ近くに決める」、「人の行動や動線にあわせてモノの置き場所を設定する」のです。使う場所と収納する場所が同じなら出しっぱなしは少なくなります。新しいキャビネットや棚を新設して、よく使うモノを置く場所を作ってみましょう。使いやすくなることが実感できると思います。     

4.分からないものカゴをつくる:新人が入ってきた時は、しばらくは滅菌あがりの器具を収納する場所が分かりません。このため、「分からないものカゴ」を作って消毒室に置いておきます。新人が収納場所が分からない時は、とりあえずこのカゴにいれておくのです。そして落ち着いた時間に、ベテランが器具の名前と収納場所を教えながら、一緒に収納していくのです。この収納作業を動画に撮り、新人がいつでも見られるようにしておく方法もあります。対策を決めたら、スタッフミーティングで全員に周知しておきましょう。特に、十分な数をそろえておくことが前提になりますので、院長先生にお願いしておきましょう。  

以上