3月15日に、第117回歯科医師国家試験の合格発表がありました。受験者数は3,117人、合格者数は2,060人、合格率は66.1%でした。国公立歯学部では、合格率90%以上の大学が北海道大学、大阪大学、岡山大学、長崎大学、鹿児島大学の5校で、合格率は昨年より7.7ポイント上昇して88.6%でした。私立歯学部では、合格率90%以上の大学が東京歯科大学、昭和大学、松本歯科大学、大阪歯科大学の4校になり、合格率は78.8%で、昨年より3.3ポイント上昇しました。

 図表は、今年受験した学生が入学した令和元年の私立大学歯学部の入学者数と、今年の歯科医師国家試験の受験者数、そして入学者数に対する合格者数の比率です。この表で、新卒受験者数が入学者に比べて減少しているのは、留年したか退学したためと考えられ、増加しているのは留年生が受験しているためです。

入学者に対する合格者数が50%台という大学に進学させるのは、親にとっても本人にとってもギャンブルといってもいい状態ではないかと思います。また、歯科医師が将来的に減少することが予想され、高齢化によって閉院する歯科医院が増加すると予想されているなかで、高度な歯学教育を受けた人材が、卒業もできずに歯科医療に携われなくなるのは大きな社会的損失でしょう。

この対策として、私立歯科大学に4年制の「保険衛生技工学部」をつくることはできないでしょうか。複数回留年した学生を4年制の「保険衛生技工学部」に転部させ、歯科衛生士と歯科技工士の資格を取得させ、卒業生に「学士」号を与えるのです。すでに3年間で両方を取得できる養成校があるので不可能ではないでしょう。卒業生は4大卒として保健所に就職したり、歯科産業や製薬会社に就職したり、歯科医院で歯科技工士や歯科衛生士の国家資格を活かして活躍することができます。歯科技工士不足、歯科衛生士不足の緩和にもつながると考えられます。また、歯科のITを専攻する4年制の「歯科情報工学部」をつくり、就学中に歯科技工士の受験資格を与えれば、歯科技工士の資格をもつ歯科情報工学士として歯科関連企業で活躍できるでしょう。医療系の理系学部は人気があるので、これらの学部をめざす学生も出てくるのではないかと思います。 歯科医師国家試験の合格発表がある度に、留年・休学中の学生や、不合格となった学生に、習得した専門知識を生かして歯科界で活躍できる未来を与えることができないかと思います。

以上