コンサルタントの視点から:カルテ開示請求への対応ルールを作っておこう
患者さんから激しいクレームになり、カルテ開示を求められるケースが増えているようです。
本人が高齢者の場合、息子さんなどから強硬に申し入れがある場合もあります。
このような場合、どう対応すればよいのでしょうか。
なお、カルテ開示には歯科医師法に基づく「診療情報の提供等に関する指針」(以下、指針と略)が定められているので、WEBで検索していただき、一度は読んでおいていただきたい。
患者さんからカルテ開示を求められた場合は、原則として応じなければなりません。
しかし、カルテ開示を求められるケースの大部分は、患者さんと深刻なクレームとなって信頼関係が崩れた状態であることが多く、カルテのコピーを保健所に持ちこむ、自費でも専門医療機関にセカンド・オピニオンを求めるなどの可能性があり、安易に開示することでトラブルを大きくする危険があります。
また、カルテを患者さんに見せて説明する場合はスマホのカメラで撮影されてしまう可能性が高いです。
このため、カルテの開示には準備と一定の時間が必要になります。
特に、開示請求が本人以外からの場合、医療機関は高度な守秘義務を負っているため、開示の妥当性について法律の専門家の意見を聞かなければなりません。
また、カルテは診査診断処置をした歯科医師の個人情報でもあるので、勤務医の場合はその歯科医師の承諾が必要になります。
その勤務医が退職している場合は照会に時間を要します。
さらに、保険診療の場合は個別指導に耐えるレベルまで、自費の場合も外部に照会されても耐えられるレベルまで仕上げておきたい。
そのため、カルテ開示には必要な手続きと一定の時間、そして費用がかかることを伝えておく必要があります。
カルテ開示の手続きとして次の4つを定めておく必要があります。
- カルテ開示の申請書を定める:申請書で患者さんと申請者の関係や本人確認ができる書類の提出を求める必要があります。免許証、マイナンバーカード、旅券など。法定代理人の場合は戸籍謄本など、患者が15歳以上の未成年者の場合は患者本人の同意書、親族または弁護士が請求する場合は患者本人の委任状等。
- カルテ開示の料金を設定する:カルテ開示手数料を診療情報提供料のⅡの10割負担である5000円+消費税とし、コピー代やレントゲン写真の複製などはそれぞれ料金を設定しておきます。
- カルテ開示までの時間を確保する:カルテを開示できるまでの準備時間として14日程度を確保する。
- カルテ開示の妥当性を判断する:本人以外からの開示請求の場合は、開示の妥当性について専門家の意見を求める必要があります。また、患者の病状によっては医院としての判断が必要になります。さらに、カルテは診断を行った歯科医師の個人情報でもあるため、担当医の承諾が必要です。
- カルテ開示に関する院内規定を定める:カルテ開示についての手続き、料金、準備時間の確保、妥当性の判断機関などについての院内規定を定めておく必要があります。
カルテ開示の手続きと料金を定めておくことは「診療情報の提供等に関する指針」に沿った対応です。
指針にあるように、カルテ開示申請書、患者説明用の規定を定め、料金等の院内掲示をして、いざというときに説明できるようにしておきたい。
激高した患者に、カルテ開示に時間と手間がかかることを伝えて、患者本人であれば、診療明細書のコピーであればすぐにお渡しできることや、他院に転院するという場合は、保険で紹介状をお作りできることなど、代替え手段を提案することもできます。
カルテ開示の手続きと料金を定めておくことで、何らかの理由で病名や症状を確認したい遺族や家族の要望に応えることも可能になります。
ぜひ貴医院でも定めていただきたい。
以上