令和2年度 概算医療費は42.2兆円で、▲1.4兆円と過去最大の減少であった。令和元年度は1兆円の増加だったので、実質▲2.4兆円もの減少ということになる。医療機関の経営に大きなダメージを与えていると考えられる。なお、厚生労働省は、人口減の影響、高齢化の影響、診療報酬改定等の影響を考慮すると、全体では実質的に▲3.6%であったとしている。

 図表は、弊社で加工した令和2年度医療費の診療科別増減率である。

 小児科が▲22.2%、耳鼻咽喉科が▲19.5%と減少率が大きく、歯科は▲0.8%であった。小児科が大きな減少になったのは、小さな子どもを抱える親がコロナ感染を怖れて「念のため受診」を見送ったケースが多かったほか、家庭や保育園などでの消毒の徹底によって、インフルエンザや手足口病などの流行性小児疾患に罹患する患者が減少したことが要因と考えられる。耳鼻咽喉科の減少は、マスク着用の普及によって、花粉症にかからなかったり、軽症で済んだりした患者が多かったほか、軽度の不調による「念のため受診」が手控えられたことも要因と推測される。片方で内科や整形外科、眼科などの診療科の減少幅が小さかったのは、感染リスクよりも、高血圧などの成人病や関節リウマチなど、身体の異常に対する対処を優先すべき事情があったためと推察される。歯科が▲0.8%と比較的影響が小さかったのは、歯の痛みや噛めない状況は我慢できないこと、SPT(歯周病安定期治療1,2)や、P重防(歯周病重症化予防治療)など、定期的に通院する患者が増加したこと、日本歯科医師会が歯科診療中の感染事例が1件も報告されていないことなどを広報したこと、個々の歯科医院が感染対策に努め、患者が安心感を抱いたためではないかと推察される。

 今後は、「コロナ感染症とともに暮らしていく時代」を迎える。耳鼻咽喉科や小児科はこのままでは経営が立ちゆかなくなる危険があり、診療報酬体系を抜本的に変えるなどの措置が必要になるだろう。

 歯科を細かく分析すると、受診延べ日数が▲6.1%減少したが、1日あたり医療費は7.7%増加していた。しかし、診療報酬は▲0.8%減少で、カバーしきれなかったことが分かる。今後もこの状態が続くことを覚悟しなければならない。対策として、WITHコロナ時代の歯科医院経営を模索していく必要がある。具体的には、➀来院患者を確保するため、歯科医療によるウイルス感染症の予防効果と重症化防止効果を繰り返し広報すること、②「見せる感染予防対策」を励行して来院に対する恐怖感を減少させることが重要だろう。③また、保険診療報酬が減少するなかで、採算性の高いSPTやP重防などの予防歯科を増やすことが欠かせない。④さらに、保険の材料や時間的制約を離れてよい治療を選べる自費治療のよさを分かりやすく説明できる、カウンセリング体制をつくることがますます必要になるだろう。                               

以上