中途採用のスタッフが入ると、必ず起きる問題が、「モノがなくなる」です。 決して紛失するわけではありません。忘れた頃に、ひょっこり思いもしないところから出てくることが多いからです。

 それは、中途入社の歯科衛生士は器具をどこに収納すべきか分からず、歯科医院勤務が初めての歯科助手や滅菌消毒だけを担当する中高年のクリーンスタッフなどは、リーマーとファイルの区別や、番手の違い、用途の違いも分かりません。似た器具があっても、名称も分からないし区別もつかないので「適当に」収納してしまいがちだからです。

 いつもと違う場所に収納されてしまうと、「隠された」のと同じ結果になります。歯科医療器具は高価ですから、歯科医院はそれほど余裕をもって器具を置いていません。限りある器具ですから、モノが足りなくなるわけです。

 これを防ぐには、新しく入った中途採用のスタッフに、「何が分からないのか」を理解してもらう必要があります。特に素人の歯科助手が入った場合は、名称も、何に使う器具かさえも理解していないのです。その結果、似たものを「ここが正しい場所」と信じて収納してしまうのです。

 このようなミスを防止するため、「分からないものカゴ」を作って、消毒室に設置しておきましょう。滅菌消毒済で、収納先が分からないもの、名称が分からないものは、適当に収納せずにそのカゴに入れてもらうのです。カゴ自体は、器具がいくつか入るサイズであれば、100均で売っているもので十分です。

 新しく入ったスタッフには、器具の滅菌消毒が終わって、キャビネットなどに収納するときに、「名称や収納場所が分からない場合は、このカゴに入れるよう」に伝えます。そして、診療終了時にベテランスタッフが、その器具の名称、似た器具との見分け方、何に使う器具なのかを教えて、収納場所を教えます。できれば写メで撮影させましょう。

 一度だけ説明しても完全に覚えることはまずないと考えて、何度でも、何日でも、根気強く繰り返し教えてあげましょう。3週間ぐらい経過すると、間違いなく収納できるようになってきます。

 やがて、分からないものカゴに器具が入っていることがなくなります。そして、器具がない、という事態もなくなってくるのです。

 新しいスタッフが器具を間違いなく収納できるようになったら、また来年4月の学卒の入局に備えて「分からないものカゴ」を保管しておきましょう。そして次は、教えてもらったスタッフが、新しいスタッフに教える係になりましょう。

                 以上