みなさんの歯科医院でも、新人を迎えられたことと思います。コロナ禍のなかで、十分な実習や他医院の見学もできなかった人達で、ひときわ大きな不安を抱えている可能性があります。今回は、新人の養成について考えてみましょう。

 学卒の新人でも、ベテランの中途採用者でも、最初は新しい医院に慣れようとポジティブな気持をもって入ってきます。ところが、いつしかその気持ちが落胆とあきらめに変わってしまうことが多いのです。大体その期間は3日、3ヶ月、3年だといわれています。その結果、ある人は精神的に不安定になり、お天気屋のようになります。また、ある人は攻撃的で傲慢な振る舞いをします。ある人は明らかにやる気をなくして勤務態度が悪くなってきます。またある人は体調を崩して休みがちになってしまいます。そして、退職してしまうのです。

 特に問題は、3日や3ヶ月で退職するケースです。莫大な募集経費をかけてせっかく雇い入れた人材がいなくなり、ユニフォームなども短期間で無駄になってしまい、せっかく教えた知識や努力も水泡に帰してしまいます。このような状態になったとき、院長や先輩達は原因がその人にあると感じがちです。しかし、実際には、院長や先輩達に原因があることが多いのです。

 ではどうすればいいのでしょうか。それは、よくできたときにほめるのです。だめなときにもあまり強く叱りません。「待て」もきちんと目をみて待てたときにほめてやります。トイレもきちんとしたときにほめてご褒美をやります。そうすると、犬はほめてもらいたいので、排泄や食欲を我慢することを覚えるのです。これは人も同じです。

新人を短期間で戦力化し、早期退職を防止するコツは次のとおりです。

1.最低3ヶ月間は待つ。

5年程度の経験を持つベテラン歯科衛生士でも、転職した場合は慣れるのに3ヶ月はかかります。学卒ならなおさらです。器具や薬品などの収納場所や発注システム、ユニットやレントゲンなど医療機器の使い方、医院の予約システムなど、覚えることが多いからです。最低3ヶ月は評価をくだすのを待ってあげましょう。中途採用の方には、前の医院でよいと思っていた工夫があれば教えてもらいましょう。よいアイデアを聞けることもあります。

2.何度も繰り返し教える

一度聞いただけでは理解できないことが多いのが医療の世界です。このため、できていないことがあれば、「この間教えたでしょう!」ではなく、辛抱強く何度でも教えることが必要です。そして、必ずメモをとらせてください。書くことで次第に大脳に入っていくからです。

3.昼食会でコミュニケーションをとる

新人歓迎会をしてあげたいところですが、コロナ禍で大勢が集まる宴会は出来ません。そのため、院長、新人さんとベテランスタッフの3人での昼食会をお勧めします。近隣のファミリーレストランなどで、毎月1回、院長がご馳走する昼食会をするのです。人数が多い場合は毎週1回のメンバー交代制とします。次第に、院長とスタッフ間のコミュニケーションが深まっていきます。                                

以上