令和3年3月16日、第114回歯科医師国家試験の合格発表がありました。受験者数は3,284人と2014年以来最大で、合格率は64.6%、合格者数は2,123人でした。

 国公立大学新卒の合格率は83.5%、受験者数は642人と昨年より30人増加し、合格者数も昨年より13人増加しました。また、私立大学歯学部新卒の合格率は80.2%で、国公立と大きな差がなくなりました。これを受けて次第に私立歯学部をめざす学生が増えると考えられます。継続的に95%以上の合格率を維持している東京歯科大学が慶應義塾大学と合併することが決まっていますが、東京大学に歯学部がないため、慶応義塾大学歯学部が東京医科歯科大学を凌ぐブランド校になると予想されます。これらの変化によって私立大学歯学部のイメージが向上し、以前のワーキングプア報道によって減少した受験生が再び増加し、学生の学力レベルも向上していくことが期待されます。

 注目されるのは、国試合格者の女性比率が上昇していることです。図表は男女別合格者の推移グラフです。114回は男性55.5%、女性44.5%で、数年後には半々になるのではないかと想像されます。一つの要因は、女性の歯科医師国家試験受験者数が増加していることで、第110回の1,097人が第114回では1,356人と23.6%増です。二つ目の要因は、女性のほうが合格率が高いことです。歯科医師国家試験の合格率は、女性の70%前後に対し、男性は60%前後で10ポイントもの差があります。三つ目は、国試合格率を高めたい私立大学が女子学生を増やそうとする傾向があることです。

R3年度歯科医師国試

 当然ながら、歯科国試合格者の女性比率上昇は歯科医師の男女比率の変化に表れてきます。歯科医師の年齢別男女比率では、29歳以下ではすでに46.2%に達しています。女性歯科医師は、結婚・出産・育児などで退場する可能性が高いため、高齢の歯科医師が退場して歯科医師不足となったときに現場に残っているかどうか不安があります。このため、育児休業中の女性歯科医師や子育て中の女性歯科医師を応援し、復帰を促し、長期的に歯科医師数を確保するための対策が必要になっています。慢性的な勤務医不足のなかで、週2日間ラストまで勤務できる非常勤女性歯科医師を3人確保できれば、週6日勤務医を確保することができます。このため、大型歯科医院では女性歯科医師のために託児施設を整備したり、家事と診療を両立させるために週2日~3日程度の勤務ができる環境を整備する医院が増えています。小規模医院では、最終診療時間を午後6時までにして午後5時で退出する女性歯科医師や歯科衛生士の影響を軽減したり、1時間の延長保育料を医院で負担して午後6時まで勤務してもらっている医院もでてきています。

 高齢者の口腔内には歯牙が残り、う蝕も歯周疾患も増加し、要介護者の増加に伴ってオーラルフレイルの予防や摂食嚥下機能の回復など、歯科医療ニーズは増大しています。片方で、歯科医師の高齢化が進み、後継者がいないために閉院する医院が各地に増えています。このような状況のなかで地域の歯科医療を支えるには、多くの勤務医を擁する地域の中核的な大型歯科医療機関の役割が重要になってくると考えられます。そのなかで、女性勤務医が戦力として活躍する場が増えます。つまり、女性歯科医師が働きやすい勤務環境を整備することが、将来に向けた成長の鍵になると考えられるのです。            

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