前歯のCAD/CAM冠が9月1日から保険収載された。これで、前歯、小臼歯、そして条件つきながら大臼歯にも適用されることになった。この結果、これまでの前歯歯冠修復における自費治療が激減するのではないかと歯科界に衝撃が走っている。

前歯CAD/CAM冠の概要は次のとおりである。①販売製品名称:カタナ アベンシア N 単冠で、ブリッジにはできない。透過性があるのでメタルコアが入っている場合も不適応とみられる。②保険点数:M015-2 CAD/CAM冠(1歯につき) 1,200点 ③保険償還価格 5760円(ブロック)CAD/CAM 材料Ⅳ ④色調採得検査が認められ、色調見本とともに当該歯冠補綴を行なう部位の口腔内写真を撮影した場合に算定できる。 D010 歯冠補綴時色調採得検査  (1枚につき) 10点 ⑤TECが認められている。M003-2 テンポラリークラウン(1歯につき)34 点

保険算定のシミュレーションは下表のとおりで、2,990点算定できる。金属代がかからないほか、CAD/CAM形成加算が算定できる。金パラの使用量と価格によって採算性は変動するとみられる。保険中心の診療体制で小臼歯などのCAD/CAM冠に慣れてきた医院には朗報だろう。

ただし、これまでCAD/CAM冠を使ったことがない先生は、いきなり導入するのは避けて、まずセラミックの形成や接着などの研修を受講していただきたい。これは、小臼歯でも破折と脱離が多く、その要因が金属歯冠修復のままの形成や合着用のセメントを使用しているケースが多いとされているためである。

また、補綴物維持管理の対象となるので、症例をよく見極める必要がある。咬合の形態によっては破折リスクが高くなるとみられるからである。経年変化で唾液が沁みこんで脆くなると、さらに破折リスクが高くなると考えられる。このためCAD/CAM冠が適応できないと診断した場合は、最初に患者にきちんと伝えることが重要である。

10年以上も口腔のなかで対合歯と毎日数十回も噛み合わせの衝撃や荷重に耐えながら使われるため、プラスチックとセラミックの混ぜ物である組成から、Eマックスやセレック、ジルコニアなどに比べると耐久性が劣ると推測される。さらに、長期間の使用のなかで唾液を含んで変色する可能性がある。自費のカウンセリングにおいては、これらの点を分かりやすく患者に説明することが重要になる。

自費との競合を恐れて前歯のCAD/CAM冠を採用しない方向で検討する医院も多いとみられる。しかし、これを採用しなければ、前歯の治療を希望する初診患者を避けるのと同じことになってしまう。むしろ、これを機会に、前歯のCAD/CAM冠修復を実施していることをホームページなどで伝えて患者を集める方向にしていただきたいと思う。患者さんに来院していただければ、自費のセラミック修復との違いをカウンセリングで説明することができ、一定の自費が確保できるからである。また、結局CAD/CAM冠になっても、いち早く先進治療を導入しているというイメージをアピールすることができる。ぜひ、この機会に取り組みを開始していただきたくことをお勧めする。                           

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