新型コロナウイルス感染症の流行によって、歯科医院で減少した患者さんを年齢別に調べると、0~9歳16.4%、60歳以上が半数以上の53.2%を占めていました。これは、10歳未満の幼児は感染リスクが低いといわれていたのに、感染し重症化した子供がでて親御さんが心配したためと、高齢者が重症化しやすいことが繰返し報道され、タレントの志村けんさんや、岡江久美子さんが亡くなったことも影響していると考えられます。この結果、新型コロナウイルスの感染を怖れて、3月から、4月、5月、6月と歯科医院に来院されなかった、小児や60歳以上の高齢患者さんが多かったのだと考えられます。

しかし、三ヶ月も歯科医院を受診していなければ、カリエスは悪化し、歯周病も進行しているでしょう。歯石や歯垢もびっしり、という状態が想像されます。このため、できるだけ早く来院して口腔ケアを受けるように案内する必要があります。とは言っても、コロナ感染が怖くて来院されない患者さんたちです。このため、次のような情報を工夫して発信する必要があります。

①歯科医院で患者さんの感染者は出ていない:これまで歯科医院で患者さんが感染した例は1件もありません。

②歯科医院はコンビニやスーパーよりも安全:歯科医院ではきちんと感染予防をしています。院内は定期的に換気し、空気清浄機を稼働させています。しかも予約制なので待合室も三密ではありません。コンビニやスーパーよりもずっと感染リスクが低いと考えられます。

③感染した患者さんはまず歯科医院に来院しない:歯科医院はもともと具合の悪い患者さんが来院する医療機関ではありません。簡単な計算でその確率を求めてみましょう。日本人の3分の1が歯科医院に通院していると言われていますが、新型コロナウイルスの患者数は2万人です。10倍の20万人いるとしても、歯科医院に通院している人は6万人です。ところが歯科医院は毎日通院するわけではなく、月に2回です。つまり4000人ということになります。そして、症状がでない20代~30代の患者さんは約20%しかいません。つまり800人です。歯科医院は68,500件あります。来院確率は1.2%。つまり、98.8%の歯科医院に無症状の感染者は来院しないのです。

④新型コロナウイルスは、舌の細菌が生産した酵素と結合することが知られています。つまり、歯科医院に3~4ヶ月以上も通院していない場合、かえってコロナウイルスの感染リスクが高くなってしまうのです。さらに、最初はウイルス性肺炎ですが、免疫力の低下とともに、口腔内のむし歯菌や歯周病菌などが肺に入って増殖しておきる細菌性肺炎に移行します。誤嚥性肺炎と同じ状態になって重症化していくのです。

電話やハガキで、小さなお子さんをもつお母さんや、高齢の患者さんに上記の内容をご説明して、来院を呼びかけましょう。院内報や院内ニュースという形で、郵送する方法もあります。とにかく、患者さんに「来院したほうが新型コロナウイルス感染症になるリスクも重症化リスクも低下する」ということを分かりやすくお伝えすることが重要です。ぜひ、スタッフミーティングで話し合ってみてください。 

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