2021年3月から「オンライン資格確認」が開始される予定である。主たる狙いは、マイナンバーカードの活用促進と、医療機関の「資格確認」作業の効率化とみられる。

「オンライン資格確認」における本人確認の方法は二通りで、一つがマイナンバーカードを使用する方法である。これは、患者からマイナンバーカードを受け取り、顔認証付きカードリーダーまたは窓口スタッフの目視で顔認証を行うか、患者に4桁の暗証番号を入力してもらい本人であることを確認する。もう一つは健康保険証を使用する方法で、これまでと同様に、窓口スタッフが健康保険証の記号番号などを端末に入力する方法である。ただし、これまでと違い、支払基金・国民健康保険中央会のデータベースから、その場で患者の医療保険資格が確認できる。

導入への補助措置としては、顔認証付きカードリーダーの1台無償提供と、「オンライン資格確認」に必要なシステム整備に係る補助金給付がある。(レセコンの改修、端末PCの追加購入、ネットワーク整備などに必要な費用など、診療所の場合は32万1千円まで)。

導入の主なメリットとして厚労省のホームページでは、次の4つが挙げられている。①保険証の入力手間と入力ミスの低減ができること、②資格過誤のレセプト返戻の低減を図れること、③来院前に事前確認で一括照会ができること、④患者の薬剤情報・特定健診情報を閲覧できること。

歯科診療所におけるデメリットとしては、次のような項目があげられるだろう。①個人情報の保護を厳重にする必要がある。健康保険証のコピーをカルテに貼付している医院が多いが、マイナンバーカードの両面をコピーすると犯罪になるので要注意である。(ただし、資格確認ができるのでコピーは不要になると予想される)。また、マイナンバーと氏名などの個人情報を適切に管理するために、カルテ庫を常時施錠できるようにするなどの改築が必要になるケースも考えられる。患者の個人情報の入ったPCや、スティック、ディスクやSDカードの取扱にも注意が必要になる。②費用と手間がかかる。補助金があっても機器やソフトを整備する費用がかかるし、スタッフ教育や研修が必要になる。③コンピューターウイルス対策が必要になる。専用回線が準備されるが、データ流出、ウイルスの侵入、ハッキングの危険性はゼロではない。

現時点では、日本歯科医師会は導入を推進しており、保険医協会は導入に反対しているが、積極的に導入すべき医院と、見送ったほうがよい医院についての私のイメージは次のとおりである。

1)導入を考えるべき歯科医院:売上高や患者数が多い歯科医院では、受付の業務効率化や返戻を低減できる効果も大きいとみられる。また、イメージアップ効果が期待できる。ホームページや院内掲示にアップすることで、先進イメージを強調することができるだろう。

2)導入をお勧めできない歯科医院:売上高が小さい医院や、古い歯科医院、数年で閉院を考えているような医院では、導入を見送る方が得策とみられる。導入費用がかかるほか、個人情報の管理の問題も大きい。特に、古い医院はカルテ庫の再整備が困難で、マイナンバーなど重要な個人情報の管理にも自信がもてないケースが多いと考えられる。数年で閉院を考えている場合は費用対効果が見合わないだろう。

「オンライン資格確認」の導入は、自医院や近隣の他の医院の状況を見極めて対処していただきたい。国としても、本格的にオンライン資格認証を導入しようとするなら、施設基準を設けて初診料、再診料を加算するなどの施策を検討する必要があるだろう。そうなると外来環境加算のように一気に普及すると考えられる。

以上