マスク、グローブ、消毒用アルコール、ペーパータオル、ペーパートレーなどが手に入らなくなっています。歯科医院ほどこれらの消耗品を必要とし、その減少で影響を受ける医療機関は少ないのではないでしょうか。在庫が少なくなると緊急避難的な対応を工夫する必要があります。

まず、現在の在庫を確認する必要があります。できれば2か月分を確保しましょう。そして、在庫を残すために「緊急対策」として次のような工夫をお勧めします。

1.マスク:自分の使った物は捨てずにとっておき、洗って煮沸して再利用する。

マスクの使用は1日1枚とします。そして、なくなりつつある場合は、緊急対策として再利用を検討します。診療に使用したマスクは外側に患者さんの血液やだ液が付着しており、危険な汚染物です。このため、煮沸して細菌やウイルスを不活性化する必要があります。5分ぐらい熱湯消毒して清潔な環境の場所で干して使うとよいでしょう。ただしプラスチックが溶けるなど煮沸できないものがあります。また、市販のマスクは再利用を想定していないので透過率が劣化する可能性があります。このため、滅菌ガーゼを切って4重にして使用しましょう。煮沸しないで繰返し使うのは、肝炎などの感染リスクがあるので絶対に避けましょう。

2.グローブ:「患者さんごとに1セット」を徹底しましょう。

カルテなどを触るときは、右手のグローブを外すと裏返しになるので、外側を下になるように左手のグローブの上に被せます。そして、素手でカルテ記入などを終えたら、左手にあるグローブを外します。今度は外側が表になって外れますので、そのまま右手に着用するのです。途中で患者さん以外のものに触れたときはアルコール消毒液で洗浄しましょう。また洗い物や清掃などには医療用ではなく、洗浄用のグローブを買ってきて使用しましょう。

3.ペーパータオル:1回に1枚で拭ききる、あるいはティッシュで代用する。

ペーパータオルがなくなったからといって、普通のタオルを流しにかけて繰り返し使用するのは、細菌の繁殖と、感染の原因になるので絶対に避ける必要があります。このため、できるだけ1枚で拭ききるようにし、なくなったらティッシュなどで代用しましょう。

4.消毒用アルコール:洗浄用は次亜塩素酸で代用する。

アルコールの在庫を大切に使うために、ユニットなどの清拭に使用する場合などは、次亜塩素酸で代用しましょう。家庭用の塩素系漂白剤を使って、500mlのペットボトルがあれば簡単に作ることができます。水に対して家庭用塩素漂白剤の濃度が0.5~1%になるよう消毒液を入れ混ぜます。家庭用塩素漂白剤の濃度は1~12%があるので商品の表記をみて調整してください。

5.ペーパートレー:大きめの滅菌バックを広げてそのままトレーとして使用する。

ペーパートレーがなくなるといって、金属トレーに戻すと、スタッフの滅菌消毒の手間が倍増してしまいます。このため、大きめの滅菌パックに基本セットを入れて、丁寧に破いてテーブルの上に広げ、そのままトレーとして使用するのです。

滅菌消毒を「節約」してグローブを1日交換しないなどは厳禁です。交差感染の危険があるからです。知恵を出し合って工夫して、なんとか乗り切りましょう。

以上