マーケティング・ヒント-174 グローブの使い方を考えよう
みなさんは診療中に滅菌グローブを着用していると思います。その目的について、みなさんは「自分たちが感染しないため」と考えていませんか?
それも一つですが、それだけではありません。例えば、皆さんがお料理の際に包丁で指先を切って、バンドエイドをしていたのに少し炎症がおきたとします。その手で治療中に患者さんのお口の出血部位に触れたら、患者さんに細菌を感染させる危険があります。その手で滅菌された器具を触わると、その器具類を介して感染症が院内に広がっていく危険もでてきます。
その手で、手洗いや手指消毒が不十分なまま別の患者さんを治療すれば、前の患者さんが持っていた歯周病菌や虫歯菌などの細菌と、指をケガした自分自身の傷にある細菌の両方を、次の患者さんにうつしてしまう危険があります。また反対に、患者さんの持っている細菌が自分の傷口からうつってくる「交叉感染」が起きる可能性もあるのです。
グローブを着用すれば、グローブに穴があいていないかぎり患者さんと術者の交叉感染を防ぐことができます。しかし、患者さんの治療で使ったグローブのまま滅菌された器具類を触ってしまうと、その器具に細菌が付着して他に広がっていきます。肝炎などに罹患している患者さんの場合は、別の患者さんに肝炎をうつしてしまう危険もあるのです。
このように、グローブは術者を感染から守るためだけではなく、術者から患者さんに感染させないように、また、患者さんのもつ細菌などの感染源を別の患者さんへうつさないために着用しているのです。ですから、患者さんごとにグローブを交換する必要があるのです。
滅菌グローブを着用したら、その瞬間から滅菌されてないものに触れずに治療を進めていかなければなりません。いったん患者さんの口腔内を触ったら、そのグローブでカルテや器具、機器を触るのを避ける必要があるのです。
逆に、神経質に患者さんに触るたびにグローブを交換するスタッフも見受けられます。しかしこれはやりすぎでしょう。グローブをつけたまま手を洗浄すれば血液や唾液などの汚れは落ちますし、その洗浄したグローブを、同じ患者さんにだけ使用するのであれば、感染リスクはないからです。
洗い物をするときに、毎回新しい滅菌グローブを出して使用するスタッフも散見されます。洗い物から自分への感染を防ぎたいのでしょう。しかし、グローブは薄いので洗い物をすると簡単にミクロの穴があいてしまいます。汚染された水が毛細管現象でグローブの中に広がって、かえって感染リスクを高めてしまうことがあります。
ですから、洗い物をするときは丈夫な台所用のゴム手袋を使用するべきです。もちろん素手でゴム手袋を着用し、着用前と着用後にはきちんと手洗いをする必要があります。
グローブはそれほど高価なものではありませんし、患者ごとに交換するのが基本です。しかし、処分費もかさみますしムダを避けたいのも事実です。自分を感染リスクから守るため、患者さん同士の感染を防ぐため、グローブの正しい使い方と節約を考えましょう。
以上