コンサルタントの視点から:「今年こそ、予防歯科を定着させよう」 

今年こそ、本格的に予防歯科中心の経営形態にしませんか!

「疾患を生まない、再発させない」予防歯科医療が、歯科経営のなかで中心的な役割を担うことになると考えられている。しかし、いまだにセットが終わったら「はい、これで終わりです」といって次の予約を取らない医院が多いようだ。保険では予防や健診は適用できないので、歯肉炎や急性歯周炎などの病名をつけて歯石除去などの処置を定期的に繰り返す。これを「保険の健診」と呼んでいる医院も多い。上下顎を2回に分けて処置し、なか3ヶ月おいて初診を算定するようだが、最近はこれが査定されたり個別指導で指摘されたりしている。また、縦覧点検を避けるために半年以上も間隔をあける医院もあるが、半年も経過するとむし歯も歯周病も進行してしまう危険がある。

予防歯科は、「疾病になりにくい状態を作り、維持するための対策や処置を継続的に実施しよう」という考え方である。健康を維持増進するために重要になっており、先日発表された「令和2年度診療報酬改定の基本方針」においても「2.患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」の具体的方向性の例として「口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進」が取り上げられている。つまり次回の改定でも、か強診での処置について点数が評価されるということである。医療費が膨らみ続けるなかで、重症化予防が医療介護政策の中心課題になっているからである。

また、予防歯科は採算性がよくなっている。例えば、SPTⅡは1,070点算定できる。1時間枠で1日5人の診療で5万円以上、22日稼働では110万円の売上である。歯科衛生士の給料は賞与や社会保険料を含めても40万円程度で技工料や金属台がかからないので、約70万円もの人件費控除後の利益が残る。これに対して、保険診療ではFMCを入れると赤字になってしまう。保険で歯を削って詰めるより予防処置のほうが採算がよい場合があるのだ。

さらに、予防歯科が定着すると自費が増える。患者さんが定期的に来院されるようになるからで、リコール率が90%程度に達している医院も多い。回数を重ねるごとにコミュニケーションが深まり、歯科治療の知識も増えていく結果、自費を選ぶ患者が増えるからだ。

(公社)日本歯科医師会が2016年に実施した一般生活者意識調査で、1年に1度以上歯科医院などで歯や口のなかをチェックした人が44.6%という結果であった。約半数の日本人が年に1度は受診していることになる。一度でも来院していただいた患者さんが予防歯科を受診してくれれば、う蝕や歯周病の発病を防止したり再発を遅らせたりすることができる。これが定着すれば国民の半数から歯科疾患が減少する。健康な口腔機能管理を進めれば、成人病の予防につながり医療費削減に大きな効果が期待できる。予防歯科が定着した歯科医院ではリコール率が90%程度に達しており、過当競争のなかで初診患者を奪い合う必要がなくなる。予防歯科を行なうことで保険でも自費でも一定の利益が確保でき、レセプト平均点数を下げる効果も期待できる。つまり、歯科医院にも色々なメリットが期待できる。今年こそ予防歯科の本格導入を考えてみてはいかがでしょうか。

以上