今年はインフルエンザの流行が早く、これから大流行する危険がある。今回は、インフルエンザの感染予防対策や休業日数、経済的損失などについて考えてみよう。

インフルエンザの感染ルートは飛沫感染と接触感染の二つである。飛沫(ひまつ)感染は、ンフルエンザに感染している人がくしゃみや咳をした際に、空気中に飛び散った唾液の飛沫を周囲の人が吸い込むことで感染するルートである。また、接触感染はインフルエンザに感染した人が鼻をかんだり、咳やくしゃみをするときに手のひらで口を抑えたりする際に、手にウイルスが付着し、そのまま触れた物から別の人に感染するというルートである。

歯科医師や歯科衛生士、歯科助手の感染予防対策は、患者さんが着席したらすぐにうがいをさせることである。患者さんの口腔内が洗い流され、医師やスタッフの問診や会話の際の感染リスクが低下するほか、患者さんの感染予防にもつながる。さらに、患者ごとにグローブを交換する必要がある。患者さんの唾液や血液と一緒にインフルエンザウイルスも付着しているからである。また、インフルエンザウイルスは直径1万分の1ミリメートルと小さく、マスクと顔の隙間などから入り込むため正しくマスクを着用する必要がある。

受付はマスクを着用できない。このため、咳き込んでいる患者さんには院内で使っているマスクを、「よろしければお使いになりますか?」と差し上げよう。喜ばれるし自分達の感染予防につながる。また、現金や診察券などにインフルエンザウイルスが付着しているので、マメに手を洗う必要がある。

最重要な予防手段がワクチンの接種である。最近は特効薬があるので簡単に治ると考える方も多いが、手遅れになると生命の危険もある。毎年2000人程度が亡くなっているので軽く考えないことが大切である。ワクチンを打っても感染することがあるが、打っておくと軽症で済む。

勤務医やスタッフがインフルエンザにかかってしまった場合、何日休ませるのが適当だろうか。実は、企業や医院でのインフルエンザによる休業については法律の取り決めはない。ただし、解熱してから2日間は感染リスクがあるので、この期間は休ませる必要がある。最近のインフルエンザ治療薬は1日で解熱作用があるので、最低でも受診してから4日間の休業になると考えられる。これは有給休暇を消化させる。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に規定する伝染病ではないためである。

家族がインフルエンザになった場合、休ませるべきかどうかをよく質問されるが、必ず発症するわけではないので発症していなければ休ませる必要はない。
インフルエンザによる歯科医院の経済的損失はどのぐらいになるのだろうか。歯科衛生士が1人インフルエンザで5日間休業した場合の歯科医院が被る経済的損失を試算してみよう。

歯科衛生士が1時間枠の担当制で予防処置を行うと約1万円の診療収入をあげることができる。1日8時間で8人まで処置できるが、滅菌消毒や医師の介助もあるため、1日5人の処置として1日5万円の診療収入が得られる。休業は有給休暇なので歯科衛生士の人件費は変わらない。つまり、5日間の休業で25万円の減収になる。歯科衛生士の人件費は1日1万円程度なので20万円もの人件費控除後の利益がなくなる。

このような事態を防止するために、インフルエンザのワクチンを医院負担で全員に接種させることをお勧めする。予防接種代金は1人3500円程度である。これで診療収入の減少リスクを低下できる。スタッフ達も医院負担で接種してくれれば、医院の福利厚生として喜んでくれるだろう。

ただし、流行が本格化するとワクチンが足りなくなるほか、本格流行期に効果を得るためには、11月中に接種していただきたい。

                                  以上