昨年の労働基準法改正で、有給休暇が年10日以上ある労働者について5日間の取得を企業に義務づけられた。取得させない場合は罰則の対象となる。
また現場で困るのが、3月末で退職を希望してくるスタッフが有給休暇の消化を要求してくることである。人手が足りない中で歯科衛生士や歯科助手、受付が欠けてしまうと診療が回らなくなる。その結果、有給休暇の残日数を買い取ることになるが、お互いに不満しか残らない解決になってしまう。

年間10日以上の有給休暇がある労働者は次のとおりである。
①常勤社員
②勤続3年以上で週4日以上勤務するパートタイマー
③勤続5年6月以上で週3日以上勤務するパートタイマー。
しかし、年間10日以上有休のあるパートタイマーに有休を取得させたとたん、他のスタッフ達も取得を求めてくる。きちんと対策をしておかなければ、ある日突然、診療が回らなくなることがあるのだ。

すでに、年末年始休暇や盂蘭盆会休暇を、労働者の代表と労使協定を結び一斉に有給休暇を取得する日としていたり、国民の祝祭日を計画的取得としていたり対策をとっている医院も多いだろう。
しかし、自由に取得できる5日間を使い残した場合は残日数を翌年に繰り越せるので、最低でも10日、多い場合は40日もの有給休暇が残ることになる。歯科衛生士の給料を28万円として40日分を買い取ると33万6千円になる。
また採用の苦労が始まることなどを考えると腹が立つのも理解できる。ではどうすればよいのだろうか。

有休の取得で困るのは、突然ある日、スタッフが不足し診療が回らなくなることである。有休取得が事前に分かっていると、交替勤務を手配するなどの対策ができ診療への影響を減少させられる。

この意味で、対策として次のような計画的取得の方法がある。
1.誕生日を有給休暇取得日とする:誕生日とその前日または後日を有給休暇の計画的取得にする。一年間で決まっているのであらかじめ勤務交代などを設定しやすい。
2.入局した日の前後をメモリアル休暇として有給休暇指定取得日とする:誕生日と入局日を休ませれば、合計で3日間以上の計画的取得になる。これもあらかじめ分っているので交代を設定できる。
3.地方出身者について、年末年始休暇の前後に1日ずつ、計2日間の有休取得をさせる:東北など地方では、年末年始に家族が集まる。できるだけゆっくり休ませることで、リフレッシュ効果が期待できる。
4.パートタイマーに、授業参観や運動会などの年間予定を早めに提出させる:パートタイマーは子育て中の方が多く、学校行事などで有給休暇を取得しがちである。前月にならなければわからない行事もあるが、学校全体の行事は年間計画を立てているはずである。このためあらかじめ申請してもらう。
5.歯科医師のセミナー受講や学会への参加予定日を有給休暇で消化させる:各種の歯科診療技術のセミナーや学会に参加される先生も多いだろう。その日を休診にする場合、スタッフの有給休暇の一斉取得日にするのだ。勤務医がいて診療を回せる場合でも、学会参加などで休診する歯科医師を担当するアシスタントや歯科衛生士を指名して有給休暇を計画的に取得させることができる。

法令で定められている以上、有給休暇は与えないわけにいかない。そのため、できるだけ円滑に消化させることを考える必要がある。働き方改革が言われているご時世である。歯科衛生士やスタッフ達にも、たまには海外旅行ができるぐらいの休暇を取得させてもよいのではないだろうか。
それでも残ってしまった場合は、気持ちよく退職前に買い取ってあげたい。それまで休まずに勤務してくれた貢献に感謝してあげよう。
そして、「また、いつでも帰っておいで」と声をかけておこう。つぎの職場に幻滅して出戻ってくるスタッフも多い。                          

以上