■はじめに


神戸で、会社帰りの女性が、後をつけてオートロックの自動ドアをすり抜けてきた男性にエレベーター内で殺されるという事件が起きた。クライアント医院でも、つきまといやストーカー被害を受けたスタッフがいる。
今回の犯罪は、自分達の身に起きる可能性があることと考える必要がある。


■警視庁のデータから読み解くストーカー被害の現状 


警視庁のデータでは、令和6年中におけるストーカー行為等に係る相談件数は、1,455件で、前年から11件(0.8%)増加している。

相談者の性別は、女性が79.5%、男性は20.5%で、過去4年間同様の傾向である。
ストーカー被害の相談者の年齢は、20歳、30歳代が約60%を占め、40歳代も年々増加傾向にある。
ストーカー行為者の年齢は、20歳代と30歳代で50.4%と半数を占める。40歳代、50歳代も多い。

相談者と行為者の関係では、図表のように、「交際相手(元を含む)」が691件(47.5%)で最も多く、次いで「知人関係等」が198件(13.6%)となっている。
歯科医院での治療者と患者に類する関係性に近い「面識なし」が10.2%、「知人関係」が13.6%で、合わせて約24%と約4分の1を占めており、恐ろしいデータである。

歯科医院では、歯科医師、歯科衛生士が患者さんと2人きりで処置を担当しており、医療者と患者さんとの関係は、「面識なし」と「知人関係」の中間のような存在になるからだ。


■歯科医院での対策


医院として次のような対策を実施しておく必要がある。

① 防犯カメラの設置。駐車場、玄関、通用口、受付、待合室と診察室が見渡せる場所、更衣室の入り口に防犯カメラを設置する。防犯カメラは犯罪の抑止力になるほか、不審者の画像を警察に提供できるようになる。

② 待合室での監視強化。不審な初診患者の情報管理、退勤時間前の長時間滞在者の対応ルールを定めておく。

③ 院内での動画や画像撮影の禁止。無断で動画を撮影された場合は、退去命令や出入禁止措置が可能である。

④ 個人情報の漏洩防止。名札は、「歯科衛生士 〇〇」など、職種名と苗字のみの表記とする。ホームページでは笑顔の集合写真と数名で写る動画などにとどめ、写真と連動した個人名は掲載しない。

⑤ 女性スタッフを休憩室や閉院後に1人にしない。必ず複数人で休憩に入り、退勤する体制をつくる。

⑥ スタッフ駐車場や通用口付近は、街灯をつけて明るくしておく。

⑦ 異変を感じた時の相談先・通報先を共有しておく。最寄りの警察署・交番のストーカー相談窓口など。ストーカー相談ダイヤル:#9110(警察相談専用電話)。電話やLINEなどのスタッフ相互の通報体制を整備する。


■従業員がとるべき対策


自分を守るため日頃から心がけておく必要がある。

① 帰宅ルートや生活パターンを特定されないようにする。退勤時間を数分ずらす、帰宅ルートを毎日変えるなど。

② 帰宅するまで注意を怠らない。周囲の異変に気づきにくくなるので「歩きスマホ」は厳禁である。

③ つきまといや不審者に早めに対応する。「何か変だ」と感じたら、“気のせい”にせず、振り返る。

④ 防犯グッズとアプリを活用する。防犯スプレー、防犯ブザー(携帯型)をバッグに装着しておく。


■まとめ


医院もスタッフも、日頃からストーカー被害の防止対策を心がけ、被害を未然に防止することを考えたい。 

 以上