先日、仕事の合間に立ち寄ったカフェでのこと。
昼どきということもあり、店内は満席に近く、レジには長蛇の列。店員さんたちも目まぐるしく動き回っていて、あきらかに忙しそうでした。

「これは時間がかかりそうだな」と思いながら待っていると、私の順番が来ました。
レジを担当していたのは、女性のスタッフ。息つく間もないほどの忙しさのはずなのに、彼女は疲れを見せることなく、にこやかな笑顔で「お待たせいたしました!」と迎えてくれました。

オーダーを伝えると、丁寧に復唱し、カウンターで飲み物を受け取る際も、「お待たせいたしました。こちら、熱いのでお気をつけくださいね」と、忙しさの中でもお客様への気配りを忘れない応対。混雑していても、一人ひとりのお客様に誠実に向き合う姿勢。心からの笑顔と、ちょっとした気遣いの言葉。
そのひとつひとつが、ただの「接客」ではなく「おもてなし」になっているのを感じました。
そのカフェを出る頃には、自然とこのカフェのファンになっていました。


歯科医院でも、忙しい時こそ患者さんの立場を考えた接遇が大切です。

あるスタッフから「忙しくなると余裕が無くなり、患者さんに対して不愛想になりがちで困っている」と相談されました。歯科医院での業務経験が浅くて、一生懸命で真面目なスタッフほど陥りやすい状況です。
混んで忙しくなると、目の前の仕事に追われて無我夢中になってしまい、お待ちの患者さんまでは到底、気をまわす余裕などなくなってしまう、ということでしょう。
しかし、これでは接遇の高度化どころか、患者離反の原因になりかねません。

歯科医院での患者不満で多いのは「待たされる」ことであり、待ち時間は精神的なものが大きく影響します。
不愛想に「少々お待ち下さい」と言われたら、どんな気持ちがするでしょうか。しかもその言葉だけでは、待つ理由もどのくらい待つのかもさっぱり分からない。
「予約制なのになんで?トイレも行きたいのに我慢した方がいいのかしら?この後の予定に響くかな…」などと不安になり何倍も長く待たされたと感じてしまいます。

一説によると「少々お待ち下さい」という言葉で、不快なく待てる時間はわずか十秒という話しもあります。
では、どう言えば良いのでしょうか。
「すみません(恐れ入ります)。前の治療が10分ほど長引いておりますので、お待ちいただけますか?」と言ってくれれば、トイレに行ったり外へ出て電話を掛けたり有効に使えるのです。患者さんにも様子がわかり、精神的な待ち時間が短くなります。
このように、ほんの少し言葉を増やすだけで時間を返してあげられるのです。


電話対応の際も同じです。
「お調べいたしますので少々お待ちいただけますか」「医師に確認して参りますので少しお待ちいただけますか」というように、待つ理由を言葉にして見通しをつけてあげることが大切です。時間の見当がつく場合は、具体的な時間をお伝えしましょう。
そして「お待ちください」ではなく、「少しお待ちいただけますか」と依頼形式で言葉を和らげて、その前に“理由”のひと言が言えるよう訓練していただきたいと思います。


混んで時間が遅れ気味で忙しい時こそ、アイコンタクトをとり、「私はあなたのことを忘れていません」という気持ちで、常に目の前以外の患者さんに対しても気配りを心掛けましょう。
「何かお尋ねになる事がありましたら、ご遠慮なくどうぞ!」という気持ちを伝えるための目礼や会釈も心がけましょう。
そうすることで患者さんの精神的待ち時間が軽減されるのです。

忙しいから!と言い訳する前に、患者さんは今どう感じているだろうか、と全体を眺めましょう。  

以上