1.はじめに

 今年の雇用保険改正は歯科医院経営に影響を与える可能性があります。対策を考えて みたいと思います。

2.失業給付(基本手当)の給付制限緩和

自己都合退職者に対する失業給付の給付制限期間が、従来の2か月から1か月に短縮されます。さらに、厚生労働省の指定する教育訓練(歯科衛生士、歯科技工士、調理師や大型免許、第二種免許、介護福祉士や保育士など)を受講した場合に給付制限が解除される措置も導入されます。

3.教育訓練給付制度の拡充

令和6年10月から、教育訓練給付金の上限が受講費用の70%から80%に引き上げられます。支給金額は、1年につき教育訓練費(学費など)の50%(年間上限40万円)を最大3年間で、最大120万円です。

①「専門実践教育訓練給付金」は、一定の期間が必要で中長期的に専門的なキャリア形成ができる教育訓練講座が対象です。受講後に賃金が上昇した場合は、受講費用の10%(合計80%)が追加支給されます。

②「特定一般教育訓練給付金」は、速やかな再就職及び早期のキャリア形成ができる教育訓練講座が対象で、資格取得して1年以内に再就職した場合、受講費用の10%(合計50%)が追加で支給されます。

受給資格は、初めて支給を受ける場合は講座の受講開始日までに通算して2年以上の雇用保険の被保険者期間を有していること、2回目以降の場合は前回の受講開始日から次の専門実践教育訓練の受講開始日前までの間に3年以上雇用保険被保険者期間を有し、前回の受給から3年以上経過していることが必要です。

4.教育訓練中の生活を支えるための給付の創設

今回の改正で、令和7年10月1日から、離職者等を含め、教育訓練受講のために休暇を取得したり休業したりした場合に賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」が創設されます。また、「専門実践教育訓練給付制度金」を受給する方のうち、45歳未満で教育訓練給付金を受けたことがない方が失業状態にある場合は、離職前の6か月間の基本手当日額の60%に相当する「教育訓練支援給付金」が支給されます。失業保険に準じた給付を受けながら歯科衛生士養成校などの専門実践教育訓練を受けることができるのです。

5.まとめ~改正の影響と考えられる対策方向

最悪の事態は、ベテラン歯科助手や受付スタッフが退職して歯科衛生士養成校をめざし、他院に再就職をめざすことです。本人は120万円+αの給付をもらい、失業保険と同等の生活費を受給しながら歯科衛生士養成校を卒業して他院に就職することが可能になります。

 対策として、医院の奨学金制度を作って歯科衛生士養成校に就学させる方法が考えられます。教育訓練受講のために休職させ、「教育訓練休暇給付金」を受給させて歯科衛生士養成校に通学させるのです。歯科衛生士養成校の学費は300万円程度ですので、教育訓練給付金の120万円の残額180万円を奨学金として貸付けるのです。そして、歯科衛生士となってから歯科衛生士手当として給料を増額し、さらに5年間で年間36万円、月額3万円を上乗せ控除して返済させる、「実質無償で歯科衛生士になれる奨学金制度」を作るのはいかがでしょうか。歯科衛生士として5年間就労させれば、SPTなどで奨学金相当の収益を上げられると考えられます。幹部スタッフに育つでしょう。

歯科衛生士の求人に50万円~80万円をかけながら短期で離職されるケースが多いなかで、優秀な受付助手の採用に有利に働き、確実に歯科衛生士の確保ができるようになると考えられます。

以上