マーケティング・ヒント-231「自費治療は支払回数をわけよう」
自費治療の入金はセット時にまとめていただくという医院が多いようです。それは、「まだ何もしていないのにお金をもらうのは悪い」という受付の感覚があるからのようです。しかし、それが原因で未収になったり、未来院になって技工物が残ってしまったりする場合がでてきます。
そのため、自費の入金は、型取りの際と、セット時の2回に分けてお支払いいただきましょう。また、30万円以上の高額治療は、着手金として精密検査料をいただきましょう。
これにはいくつか理由があります。
- 補綴物はオーダーメイドなので、印象をとり技工所に発注すると後戻りできないためです。
発注時点で、技工料相当分とそれまでの診断料と処置料をいただく必要があります。この時点でキャンセルされてもご返金はお断りします。技工料を支払わねばならず、歯科医師の処置も、形成、印象まで終わっているからです。
② クレジットカードを切りやすくなる金額だからです。例えばジルコニアのインレーを55,000円でセットするとします。高額な印象がありますが、2回払いにすると、27,500円の2回払いになります。印象を採った日に請求しても、カードで払ってくれる可能性が高くなります。
③ 着手後のキャンセル防止効果があります。代金半額を支払うと、キャンセルすることに抵抗感が生まれキャンセル防止効果があります。そのために、支払い条件を記載した確認書や契約書をお渡しする必要があります。
④ 高額の自費治療は着手時に一部負担金をいただいておきましょう。治療費が高額になる矯正やインプラントの場合は、診療開始前に精密検査料として3万円をお支払いいただきます。これも一部代金を支払うと、「支払ったお金を放棄するのが惜しくなってキャンセルをしにくくなる」という患者さんの心理を利用するためです。
例えば、インプラントの場合は、精密検査(CT)の際に、検査料11,000円と画像診断料22,000円の合計33,000円をいただきます。これはキャンセル時でもお返ししません。そして、インプラントは高額であり、準備も必要なので、手術前に全額の入金をいただきます。
矯正の場合は、精密検査(CT、アイテロなど)の際に、検査料と画像診断料として、合計33,000円をいただきます。そして、ワイヤーの場合もインビザラインの場合も、装置装着前に全額の入金をいただきます。装置の技工料もアライナー代も最初にかかるからです。
インプラントも矯正も、事前に全額の振込ができない場合は、デンタルローンをお勧めします。これは一括で歯科医院に入金してもらえるからです。ただし、デンタルローンの審査が下りない患者さんは、こちらからキャンセルさせていただきます。多重債務者など信用不安がある方で、後々問題が起きがちだからです。
留意して欲しいのは、自費の形成後のキャンセルは、レストランでコースを頼んで、少し食べてから、時間がないとか、美味しくないとか言って残りをキャンセルするような場合と同じだということです。料理の材料仕入れも調理も終わっているため、法的にも全額の支払いが必要です。身勝手な患者さんの着手後のキャンセルで、医院が損害を被らないように、自費の支払いは2回払い、高額の自費は精密検査料など3万円程度をいただくようにしておきましょう。 以上
■セルフレジとクレジットカードを考える
最近はセルフレジを導入する歯科医院が増えてきました。いわゆるセミセルフレジというもので、テラオカやアルメックスがトップメーカーです。セブンイレブンやローソンなどのコンビニでも設置されています。セブンイレブンはセミセルフレジ(店員さんがスキャンしてお客さんは支払うだけ)、ローソンはセルフレジ(お客さんが自分でスキャンして支払う)など、お店によって特徴があります。大型スーパーではセミセルフレジでの運用が多いようです。
歯科医院では、セミセルフレジの運用になります。受付が領収証のバーコードをスキャンして、患者さんに画面を提示し、支払っていただくわけです。ところで、セルフレジを導入する目的は、「会計待ちの短縮と受付の人員効率の向上」です。このとき、①現金だけにする、②現金とクレジットカードにする、③現金とクレジットカード、さらにプリペイドカードにする、という3つの対応があります。では、どの方法が目的に沿っているでしょうか。
- 現金だけの場合:すべての患者さんが、お札と小銭を用意してセルフレジに入金することになります。保険の窓口負担で数千円と端数なら、簡単に終わります。しかし、自費治療でインプラントや矯正などの場合は、高額の診療費分の1万円札を1枚ずつセルフレジに入れなければなりません。雨でぬれたり、シワになったりしていると入りにくくなって時間がかかります。しかも多くの機種で5千円札が使えません。新札への対応も遅れており、対応できない機種も残っています。対応できない場合、受付に言って両替をしてもらう間に行列ができてしまいます。
- 現金とクレジットカードが使える場合:今ではどの患者さんも1枚はクレジットカードを持っていると思います。JCB、VISA、MASTERなどは多くの利用者があります。自費治療でインプラントや矯正などの場合でもカード払いを選択していただければ、受付の関与なく支払いが終わります。
- 現金とクレジットカード、プリペイドカードが使える場合:これには問題点があります。プリペイドカードは種類が多く、交通系、楽天Edy、WAON、スマホのPayPayなど様々です。このため、患者さんがセルフレジの前で支払方法の選択に迷ってしまうのです。受付に問い合わせて受付を煩わせ、支払い完了まで時間がかかります。すると行列ができてしまいます。
セルフレジ導入の目的は、「会計待ちの短縮と受付の人員効率の向上」です。この視点にたてば②の現金とカード払いが最適であることがご理解いただけると思います。
次に、現金とカード払いが選択できるとして、保険診療も自費も全部カード払いとするか、自費だけカード払いにするかという選択があります。どちらがよいでしょうか。実は、セルフレジを入れた場合、保険でもカードが使えるようにしないと、せっかくの時間効率化効果が半減します。保険診療でカード払いをしようとする患者さんがいるたびに受付からお声がけする必要があり、気まずくなるほか、現金を用意して入金するための時間がかかったり、現金の持ち合わせがなかったりすることもあるのです。つまり、保険も自費もすべてカード払いを選択できるようにしておかなければ、セルフレジの効率化効果が最大化できないのです。
以上