最近、みだしなみの規則があるだけで、歯科衛生士の採用が難しくなるという話を聞きました。しかし、医療機関ですので、患者さんに不快感をあたえることのないように配慮しなければなりません。今月はみだしなみを考えてみましょう。
接遇の基本は第一印象を良くすることです。

第一印象は、①視覚55%…目線・態度・表情など、②聴覚38%…声・速さ・抑揚など、③言葉7%…話の内容、で形成されます。
つまり、見た感じが最も大切なのです。そして、最初の2秒で第一印象が形成され、続く4分間で完全にその人のイメージが評価されるのです。
そして、派手な化粧やだらしない服装だけが、患者さんに受け入れられないだけではありません。

笑顔でかわいらしい応対をしてくれた受付さんの襟まわりが黒く汚れていた、肘の裏側が汚れていた、ユニットに案内してくれた歯科衛生士のエプロンに染めだし液か血液かわからないピンクの染みがついていた、あるいはヘアカラーが黄色で肩まで垂れていた、グローブのなかの爪が伸びていた…。患者さんはどんな感じがするでしょうか。清潔感も大切なのです。

航空会社のCAさんや百貨店や一流ホテルでは、身だしなみにとても気を配っています。お化粧、ヘアカラー、ヘアスタイル、身につけられるアクセサリー、爪の長さなど細かくルールを決めています。これは、だらしないまま放置すると、その航空会社やホテル、百貨店に対する信頼感を壊してしまうからです。逸脱した場合には上司からすぐにその場で注意されます。

もちろん歯科医師も身だしなみが大切です。当社のクライアント医院でこんな例がありました。若い勤務医が、髪を明るい茶色に染め、長めのカットで真ん中分けにして、首には金のネックレス、腕にはゆるいブレスレットをつけ、シャツの襟をゆるくしてネクタイを緩め、そのうえから白衣のボタンを全部止めずにだらんと着て診療をしていたのです。院長は辞められたら困ると考え、一度も注意をしていませんでした。そして、ある日事件が起きました。

中年の男性患者がその歯科医師を見るなり、「お前が俺を見るのかよー」と一言いったのです。そして、「覚えてろよ」と言い捨てて帰ったのです。その患者さんは、ひと眼見て「ダメ歯医者だ」と感じたのでしょう。人は外見で判断されます。信頼感など生まれるわけがありません。

その歯科医師には院長からも私からも厳重に注意をしました。そして、私は院長にも苦言を申し上げました。彼を放置したのは院長だからです。
この医院では「別の先生にしてください」「院長先生でお願いします」という患者さんが大勢いたことが分かりました。この医師の服装によって医院は莫大な損失を生んでいたのです。

身だしなみは、患者さんの疾病を治療する役割を持つ医療機関にとって、とても重要です。
しかし、みだしなみの規則があると採用できないこともあるようです。このため、「規則」ではなく、「髪の色は8番まで」、「髪は必ずまとめておくこと」、「爪は2㎜まで」、「口腔内に落下する危険のあるアクセサリーは着用禁止」など、自主的なルールを話し合って決めておきましょう。

以上