歯科技工士の供給減少に歯止めがかからない。
令和2年度歯科技工士国家試験(令和3年2月発表)の合格者数は823人であった。
毎年技工士が800人しか供給されない時代が来ている。
今回は歯科技工士の現状と対策を考えてみたい。

1.歯科技工士の現状

①歯科技工士の高齢化と若年人口の減少
図表は、就労歯科技工士の年齢別グラフである(令和2年 衛生行政報告例)。
高齢化が進行し若年層が減少している。
50歳以上の歯科技工士が18092人、52%と半数以上を占め、65歳以上が14.3%と最大である。
定年を65歳とすれば、今後15年間に毎年1206人ずつ離職することになる。
毎年800人の補充では毎年400人以上が足りずに減少していく。将来への不安が顕在化しつつある。

②女性歯科技工士の割合が増加
若手の男性歯科技工士が激減しているのに対し、女性歯科技工士は49歳代以下の各年齢層でそれぞれ500人程度いるため、女性歯科技工士の構成割合が増加している。
特に25歳未満では56%と過半数を占める。
女性歯科技工士を歯科医院で採用すれば、保険算定ができるCAD/CAM冠やインレーを製作できるほか、自分で印象を採得して補綴物を作成できる重宝な人材になる可能性がある。   

③零細技工所が大部分
歯科技工所の規模別では、1人技工所が76.3%を占め、2人技工所を合わせると89.0%に達する。
しかし、「2021歯科技工士実態調査」では、「将来の意向」について、「独立を目指す」は8.4%に過ぎず、38.5%が「勤務のまま定年まで勤める」としており、今後も増加するとは考えにくい。
これは、CAD/CAMなど、高額の技工設備が必要になるためと考えられる。

④後継者がいない
問題は後継者がいない歯科技工所が73.3%を占めていることである。中小企業の後継者難による廃業が問題になっているが、歯科技工所の後継者難による廃業が現実のものになりつつある。

2.今後の対策方向

歯科技工士の状況の改善対策は、若い人に魅力ある職業にすることに尽きるだろう。
若年労働人口が減少しているなかで、他の医療専門職よりも魅力ある職業にしていくためには、年収や勤務環境の改善、社会的なイメージの向上が不可欠だろう。
また、若い人が「歯科技工士になって良い会社に就職しよう」と考えるような大型歯科技工所が増えていけば、歯科技工士という職業の魅力も高まると考えられる。
大手の調剤薬局に勤務する薬剤師のような状況になる可能性がある。

しかし現在は、一人技工所が下請けになる形態での重層化が進行している。
すべての歯牙にCAD/CAMが保険適用され、チタン冠も普及しつつあるが、高額の技工機材が必要で一定の経営規模の歯科技工所しか対応できない。
従来型の歯科技工を得意とする一人技工所は、仕事を得るために下請けにならざるを得ないと考えられる。

歯科技工は歯科医療を支える重要な職種であり、歯科医療を直接的に支えている産業である。
将来に向けてより発展できるような対策が急務になっている。                     

以上