令和3年度 概算医療費の動向が厚生労働省から発表された。令和2年度は42.2兆円で▲1.4兆円もの過去最大の減少となったが、令和3年度は44.2兆円で、対前年比で4.6%もの増加となった。対前々年比でも43.6兆円から44.2兆円まで0.6兆円増加した。1年当たりに換算すると0.3兆円の増加であった。コロナ前の3年平均では、高齢化による医療費増大を受けて0.7兆円増加していたので、これまでのトレンドに戻ったということだろう。

 年齢別にみると、未就学者の1人あたり医療費の伸びが22.3%と最大で、1日受診者数でも18.6%の増加、1日あたり医療費は3.1%の増加となった。前年の受診抑制の反動があった可能性がある。75歳以上の1人あたり医療費は2.0%と低い回復にとどまったが、75歳未満は6.4%と大きく回復した。 

 診療種類別では、外科を除いていずれの診療科もプラスに転じた。そのなかで、昨年大きく減少していた小児科が+42.3%と突出している。耳鼻咽喉科も+13.6%と回復した。しかし、外科は継続して減少し、令和元年比で▲12.9%の減少になった。

 歯科は、次のグラフのように令和2年度は減少に転じていたが、令和3年度は大きく伸びて3.15兆円となった。点線で表示したように、従来のトレンドで伸びたような状態になっている。



 令和2年度に1.4兆円も減少した概算医療費総額が令和3年度は大きく増加した要因は、コロナ感染症の感染リスクへの恐怖から、受診抑制行動が起きた反動があったこと、PCR検査費用や、コロナ関連の受診費用が伸びたことなどが要因として考えられる。

 昨年、苦境にある診療科の医療基盤を支えるために診療報酬体系を変えるなどの措置が必要になる可能性を指摘したが、外科の医療費減少の要因、耳鼻咽喉科の回復が少なかった要因を分析したうえで、対策を検討する必要があるだろう。

 歯科医療費は回復しており、コロナ禍の第7波は落ち着いてきたが、年末年始を控えて第8波の感染拡大が起きることが予想される。来年以降もこのような状態が継続することを見越して、WITHコロナ時代の歯科医院経営を模索していく必要があるだろう。

 基本的な対策方向は昨年と同じになるが、➀歯科医療による新型コロナウイルス感染症の予防効果と重症化防止効果を繰り返し社会に広報すること、②これまで以上に感染防止対策に努めること、③SPTやP重防など定期予防の患者を増やして行くこと、④採算性の高い自費治療を増やすことが重要だろう。医療費が再び増大するなかで、薬価を犠牲にして保険診療報酬のプラス改定を続けられなくなっているとみられるためである。このため、今後ますます歯科医師やスタッフのカウンセリング能力の向上、歯科カウンセラー養成の重要性が増していくとみられる。

 弊社としても、増大するニーズに対応したセミナーを充実させていきたいと考えている。  

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