コンサルタントの視点から:歯科医院での管理栄養士の採用と活用を考える
コロナショックからの急激な景気回復によって、若者に人気がある飲食店や旅行関連業界が求人を開始しているため、優秀な受付や歯科助手の採用が難しくなっている。
そのため、管理栄養士の採用と活用を考えてはいかがだろうか。管理栄養士は、病院で入院患者の献立を検討する医療専門職である。4年生大学で、栄養学だけでなく、内科学、解剖学、サプリメント学などについて学んでいる。病院や介護施設、学校など、1回に300食以上の集団給食をする施設では、栄養士のうち一人が管理栄養士であることが求められており、保育園や給食のあるこども園でも献立を考え調理する役割を担っている。
管理栄養士になるには、4年生大学を卒業して国家試験を受験するルートと、短期大学を卒業して栄養士になり、実務経験を経て国家試験を受験する2つのルートがある。4年制大学からの合格率は92.9%だが、実務経験を経る場合は合格率28.8%と狭き門である。
その管理栄養士が就職難に直面している。管理栄養士数は11.4万人(2015年)であるが、全国の病院数は、8238(医療施設動態調査)。介護老人福祉施設が 8,306 施設、介護老人保健施設が 4,304 施設、介護医療院が 536 施設、介護療養型医療施設が 556 施設。(介護サービス施設・事業所調査の概況)。そして、保育所は29474施設(社会福祉施設等調査)幼稚園は9698施設(学校基本調査)で、全部合計して約6万1千件である。各施設に2人いれば問題はないのだが、毎年1万人ずつ誕生してくる。このため、大企業の社員食堂を運営する給食サービス企業やフィットネスジムなどに就職するケースが多かった。しかし、コロナ禍でのリモートワークの普及で、社員食堂や多くのフィットネスクラブが閉鎖されたため、就職が困難になっているのだ。
その点、歯科医院は6万8千軒あり、しかも歯科と栄養は隣接領域である。肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧症など生活習慣病や食物アレルギー、離乳食や高齢者向けの献立など、栄養指導や、居宅療養管理指導などの領域も広がっている。しかし、歯科医師も歯科衛生士も栄養指導に時間を割く余裕がない。管理栄養士は図表のように女性が大部分で、特に若い世代が就職に困っている。賃金水準は介護施設や保育園に就職するケースが多いため、歯科医院でも採用出来るレベルである。彼らを採用できれば、受付・助手業務の高度化と、栄養管理に関する多様な患者ニーズへの対応を同時に進められる。例えば、離乳食や介護食教室、外来や訪問歯科での栄養指導や介護施設の管理栄養士と連携しての摂食嚥下の多職種連携への参画、担当医と連携しての居宅療養管理指導が可能になる。オーラルフレイルの口腔機能検査を担当している医院もある。患者さんに分かりやすい栄養指導で他医院を差別化できる可能性があり管理栄養士を雇用していることでケアマネージャーから高評価を受け訪問先を紹介してもらえる可能性もある。
優秀な受付・歯科助手を採用したいのなら、管理栄養士の採用と活用を検討してはいかがだろうか。
以上