マーケティング・ヒント-192 問題患者への対策を考えよう
どの歯科医院にも、クレーマーっぽい患者さん、自分の都合ばかり優先する身勝手な患者さん、遅刻や無断キャンセルの常習患者さんなどがいます。「この人は困った人だけど、治療してあげないといけない」と思って誠実に治療を続けているでしょう。しかし、その結果、診療が押してしまったり、他の患者さんの治療に影響がでてしまったりすることがあります。
私のクライアント歯科医院でこんな事件がおきました。その患者さんは男性で少しヤクザっぽい方です。無断キャンセルが多く、突然来院してすぐに診てくれといってきたりします。ある勤務医の先生が診ていたのですが、その日は混雑していて2時間待たせてしまったのです。すると激高して暴言を吐いて帰ってしまい、後で医院に電話がかかってきました。「おまえのところの○○という歯医者を出せ。俺様をどう考えているんだ。今日のことは必ず仕返しするから覚えていろ!」という内容でした。すぐに相談がありましたので警察に電話連絡するよう伝えました。警察はその患者さんに電話を掛け、二度とこの歯科医院に通院しないことを約束させてくれました。
後で担当の先生に事情をお聞きすると、いつもあまりに身勝手なので、当日は混雑していたこともあり、次回からは予約してくれるだろうと考えてわざと待たせたそうです。しかし、このような患者さんは自分が悪いと思っていないので反省などしません。悪いと思っていないので平気で繰り返します。そしてそのたびに、担当医だけでなく、受付もスタッフも嫌な思いをするのです。
歯科医療は患者さんと医院との診療契約によって行なわれます。診療契約は応召義務もあるため一般の契約とは違うと感じられがちですが、決して特別な契約ではありません。歯科医師は契約に基づいて誠実に歯科治療を行なう義務があり、患者さんにも誠実に歯科治療を受ける義務があるのです。この患者さんのように、身勝手で無断キャンセルを繰り返す、突然来院して治療を迫る、医師やスタッフに自分の都合を押しつけて挙げ句の果てに暴言を吐く、などの行為を繰り返す方は、「誠実に歯科治療を受けている」状態とは言えないでしょう。
法律には「信義誠実の原則」という言葉があります。これは社会生活において、「権利の行使や義務を履行する際には、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならない」とする原則で、「信義則」とも言われます。この原則は診療契約の前提であり、これが守られない場合には契約は成立しないので、身勝手で暴力的な患者さんをお断りしても応召義務違反にはならないのです。
問題患者には、極度の歯科恐怖症や、極度の痛がり、重度の発達障害とみられる患者さん達もいます。このような患者さんは悪意があるわけではないのでなんとか対応してあげたくなるのですが、このような場合も、大学病院など引き受ける能力のある専門医療機関に送ってあげたほうが、その患者さんのためになります。それは、一般の歯科医院のチェアタイムのなかでは患者さんの対応に追われてしまい、治療が進まないケースが多いからです。このような特殊な患者さんに対応できる設備やスタッフを備えた専門医療機関に紹介してあげたほうが、医院にとっても、医師やスタッフ達にとっても、そして、その患者さん達にとってもよい結果に結びつくことがあるのです。具体的に話合ってみましょう。
以上