新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらず、東京、大阪、兵庫、京都の都府県では再び緊急事態宣言が出された。飲食店だけでなく集客施設まで休業を要請しており、都内は午後8時でネオンやイルミネーションの消灯が要請された。これ以外の各地でも蔓延防止対策が講じられている。感染力の強い変異ウイルスが広がるなかで、ワクチン接種が遅れている。マスコミも感染力の強い変異型ウイルスに対する警戒感を煽っており、再び新患が減少する可能性がある。このなかで対策として考えられるのは、今来院していただいている患者さんに定期的に来院していただくことである。予防歯科の強化が有効な対策と考えられるのだ。

 予防歯科を強化することで売上も増えていく。図表は、(公社)日本医業経営コンサルタント協会の歯科経営指標から、定期予防管理を実施している医院と実施していない医院の年間売上を比較したものである。定期予防管理を実施している歯科医院の売上高は年5千万円以上が約70%を占めているが、実施していない医院では年間5千万円以上の医院は43%に過ぎない。定期予防を実施している医院のほうが、売上高が大きくなっているのだ。これは、歯科衛生士の予防処置によって、歯科医師が関与しない売上が増えていくためと考えられる。

 また、予防歯科を強化することで採算性が向上し医業収益が増加していく。SPTやP重防などの予防処置に高い保険点数がついており、技工料も材料費も掛からないので採算性が高いためである。例えば歯科衛生士が1時間にSPTⅡを担当すると約1万円の売上である。1日5人、20日稼働で100万円の売上げになる。原価は歯科衛生士の人件費だけであり、これを40万円とすれば、毎月60万円の人件費控除後の粗利益が残ることになる。歯科医師の保険診療より多くの利益が残るのだ。

 予防の強化は患者にもメリットがある。それは口腔ケアでウイルス感染の予防効果と重症化防止効果が期待できるからだ。また、う蝕や歯周病などの歯科疾患は、放置したり様子を見たりしていると次第に悪化していくが、定期予防で疾患の進行を遅らせたり、早期に発見したりできる。しかも、これまで歯科医院で患者さんが感染した例は1件も出ていない。これを患者に分かりやすく伝える必要がある。

 予防歯科を強化することで、アフターコロナに備えることができるだけでなく、売上も利益も増加し、手持ち患者が増え、次第に経営を安定化させることができる。よいことづくめで、コロナ禍の影響を最小限にして経営を安定化させるためには、予防歯科の強化が最重要な方向性といえるだろう。しかし、歯科衛生士の採用、患者担当制の導入、アポイントコンピュータの導入とチェアサイドでの予約取り、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準取得などの対策が必要である。計画をたてて着実に進めていただきたい。

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