マーケティング・ヒント-178 予防患者を呼び戻そう
「新型コロナウイルスの感染リスクが高いから、歯医者には行かない方がよい」という誤ったマスコミ報道が繰り返されたため、患者数が減少しています。特に、不要不急とされた「定期健診」の患者さんのキャンセルが相次ぎ、歯科衛生士のアポイントが埋まらない状態が続いています。
歯科医療は不要不急でもなく、歯科医院の感染リスクは高くありません。歯科医療は歯科医師が治療計画に基づいて治療を進めており、歯科衛生士が行っている処置も、SPT(歯周病安定期治療)は、歯科医師の指示のもとに行っている重症化予防のための処置であり、歯周病重症化予防治療はその名のとおり治療です。歯周基本治療のスケーリングやSRP、そしてTBIは定期健診ではなく、歯周病の治療に欠かせない処置であり、決して不要不急ではありません。
さらに、元国立保健医療科学院の鶴見大学歯学部の花田信弘教授がNHKのテレビ番組で「口腔ケアをすることで新型コロナ肺炎の重症化が予防できる。ウイルス性肺炎から免疫力暴発によって肺の細胞がダメージを受け、そこにむし歯菌や歯周病菌などが気管支に入って増殖し細菌性肺炎を起こす。そしてこれらの細菌が血液に入り込み、体を蹂躙して死の可能性が高くなる。」と説明されていました。つまり、口腔ケアとTBIは不要不急どころか、積極的に患者さんにお勧めする必要があるのです。
また、歯科医院はコンビニやスーパーよりもずっと感染リスクが低く安全です。それは、もともと歯科治療を受けるために身体的には元気な患者さんが来院する医療機関だからです。体調が悪い日に歯医者に行きたい人はいないでしょう。しかし、コンビニやスーパーは、多少体調が悪い方でも食品や飲み物を買いに立寄ります。歯科医院では感染予防のために滅菌消毒を行なって患者ごとに器具を交換しチェアなども頻回に清拭しています。コンビニやスーパーでレジやカウンターをお客さんごとに清拭しているでしょうか。歯科医院のほうがずっと安全なのです。自信を持って患者さんに正しい情報を伝えましょう。
6月4日は「むし歯予防デー」。そしてこの一週間は「歯と口の健康週間」です。例年はいろいろな行事が催され、マスコミでも歯みがきや口腔ケアの重要性が繰り返される時期ですが、今年はコロナ一色でなかなか国民に浸透しないと予想されます。このため、歯科医院でキャンペーンを企画しましょう。今年は、成人もお子さんも含めて、口腔ケアに来院していただく運動を考えてみましょう。ターゲットは、4月、5月に予防の予約をキャンセルした患者さんたちです。2ヶ月も経過しており、お口が気持ち悪くなっている頃だからです。また、お子さんを持つお母さんたちも、しばらく歯医者に行かせていないので、子どものむし歯が気になっている頃です。これらの患者さんをアポ帳からリストアップして、来院を呼びかけるのです。
また、過去1年間で、治療が終了したものの定期予防に来院していない患者さんもターゲットです。不要不急ではなく感染リスクも低く、しかも口腔ケアで新型コロナウイルスの感染予防にも重症化予防にも繋がることを分かりやすくお伝えするのです。担当の患者さんに電話をかける、リコールハガキを送る、SMSで呼びかけるなど対策を考えましょう。そして、1日も早く歯科衛生士の予約列を元通りに埋めていきましょう。
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