コンサルタントの視点から:「130万円の壁が緩和される」
■はじめに
厚生労働省は、いわゆる「130万円の壁」への対策として、2026年4月から社会保険の扶養判定ルールを見直す方針を示した。
改正後は、収入が労働契約による給与収入を基に判断されるため、残業代が含まれなくなり、パートの「働き控え」が解消されることが期待されている。
■ 「130万円の壁」とは何か
「130万円の壁」とは、配偶者の社会保険の扶養に入っている人が、年収130万円以上になると扶養から外れる基準のことである。130万円を超えると、自分で国民健康保険や国民年金などに加入する必要がある。
壁にはもう一つ、「106万円の壁」がある。これは一定規模以上の大企業で働く年収106万円以上、一週20時間以上勤務などの条件を満たす場合に、勤務先の社会保険に加入する必要があるという基準である。
つまり、130万円の壁が関係するのは、歯科医院などの小規模事業所で、週20時間未満で働く人、ということになる。
130万円に含まれる収入は、現行制度では次のように、すべての収入が含まれる。
総収入=「基本給+残業代+各種手当+交通費+副収入(不動産収入、配当など)」≦130万円
今後は、「労働契約による1年間の収入の総額の見込みが130万円を超えるかどうか」で判断される。
これまで、扶養内で働く多くの人は、年収が130万円を超えそうになると、仕事量を減らす、残業を避ける、といった「就業調整」を行ってきた。これが2026年4月以降は、「労働契約で見込まれる年間収入が130万円未満であれば、扶養から外れなくなるのだ。
今回の改正の本質は、「実際の年収」ではなく、「労働契約で想定した年収」を基準に扶養判定が行われるという点にある。今後は、労働条件通知書や雇用契約書に年間収入がどう書かれているかが社会保険上の判断基準になる。
このため、一時的な残業で収入が増えても、労働契約上の年収が130万円未満であれば、年収調整のために働き方をセーブする必要がなくなるわけである。
歯科医院はパート中心で繁忙期の残業が発生しやすいため、今回の改正は人材確保と定着によい影響がでてくると考えられる。
■歯科医院ではどうすればよい?
この改正に備えて院長が行うべきことがある。
それは、労働条件通知書あるいは雇用契約書を作りなおして、“年収の見込み”を130万円以下にすることである。
「時給はいくらか」「週何時間働く想定か」「年間でどの程度になるか」を明確に規定しなければならない。
扶養を外れない年収を労働契約に明記しておくことが、スタッフの130万円の壁対策だけでなく、医院側のリスク回避にもつながるからである。
労働条件通知書には、少なくとも次の点を整理して記載しておく必要がある。
①時給(基本給)、②所定労働日数、③所定労働時間、に加えて、 ④想定される年間勤務時間、⑤年間給与の見込み額:「想定年収:約〇〇〇万円(所定労働時間ベース)」など。 ⑥休日時間外勤務が繁忙期など一時的なものであること:「残業は例外的に繁忙期・突発対応に限定される」、「恒常的な勤務時間増加は契約変更の対象となる」など。
■まとめ
これまで多くの歯科医院で、扶養内で働く非常勤の歯科衛生士が11月頃から労働時間を短縮するため、年末の混雑期の人材確保に苦慮してきたが、今年からは多少は安心して診療できるようになるのではないだろうか。
以上

