コンサルタントの視点から:「最低賃金に気を付けよう」
■はじめに
昨年、地域別最低賃金が大幅に引上げられました。東京都は1,226円、神奈川県は1,225円になりました。
月給制や歩合制の場合でも、時間給に換算した場合に最低賃金を下回っていないか注意が必要です。最低賃金を下回ると、罰則もあり、ハローワークで求人が出来なくなるなど大きな影響があります。
また、ハローワーク関連の多くの助成金(キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金、人材開発支援助成金など)も、最低賃金違反があると、申請できないか、不支給となる可能性が極めて高くなります。
「当院の賃金は他より高くて、歯科助手でも残業手当を含めると25万以上もっていく。最低賃金を下回ることなどありえない」と考えている医院が多いと思います。しかし、最低賃金額の計算では、固定時間外手当を含む休日時間外手当、皆勤手当、家族手当、通勤手当などが除外されるので、最低賃金を下回っているケースがあるのです。
■ 最低賃金の計算ケーススタディ
栃木県の歯科医院で、月給制の週休2日で働く受付助手のA子さんの場合です。
栃木県の最低賃金は1,068円です。1日の所定労働時間を8時間とします。
ある月の総支給額は、月給220,000円でした。内訳は、基本給170,000円、職務手当10,000円、皆勤手当10,000円、住宅手当5,000円、通勤手当5,000円、時間外労働手当(残業代)20,000円でした。
ここから最低賃金の計算の対象とならない賃金を除外します。皆勤手当10,000円、通勤手当5,000円、時間外労働手当(残業代)20,000円を除くと、月給は185,000円です。
●ケースA: 年間所定内労働日数を260日(週休2日のみ)とした場合:
国民の祝祭日のある週は木曜日の休診日を開けて診療しています。このため、祝日は休日ではありません。
年間所定労働日数は、365日-104日=261日
月間所定労働時間は、261日×8時間÷12か月=174時間
最低賃金は、185,000円÷174時間 ≒ 1,063円 1,063円<1,068円
⇒A子さんの最低賃金額は栃木県最低賃金額よりも低いため違法状態となります。
●ケースB: 1年間の所定労働日数を、年間休日120日とした場合:
年間所定労働日数は、365日-120日(週休2日の年間104日に加え、祝祭日16日を休日)=245日
月間所定労働時間数は、245日×8時間÷12か月=163.33時間
最低賃金は、185,000円÷163.33時間 ≒ 1,133円 1,133>1,068円
⇒A子さんの最低賃金額は栃木県最低賃金額よりも高い金額となり合法です。
このように、年間休日120日としている医院では、所定内労働日数を245日で計算できるので、最低賃金の計算では有利になります。
■まとめ
最低賃金に気をつけましょう。最近はいつスタッフが労基署に相談に行くかもしれないからです。
ただし、諸物価が高騰し医院経営が厳しくなっている折から、賃金を上げるだけでなく、年間休日を120日にして年間所定労働日数を減らすことで最低賃金をクリアーする方法もあります。
年間休日を120日にしても医院の売上は変わりません。祝日の患者さんを平日で埋めていくことを想定すればイメージがわくと思います。総予約数が変わらないからです。
歯科衛生士の採用にも有利に働くので、年間休日120日の導入も検討してはいかがでしょうか。
以上

