成功する!歯科医院のマーケティング対策 512号
【コラム】
11月8日(土)に、「定期管理型予防歯科医院のつくり方」シンポジウムに参加してきました。
沖縄と千葉で開業されている康本征史先生が座長を務められ、厚生労働省の医政局から、小嶺祐子先生、髙田淳子先生が、将来の歯科医療提供体制について講演され、富山県開業の立浪先生が、日本歯科医学会の1.5次医療機関について発表されました。
また、歯科業界への展望として、(株)ヨシダの山中社長様、新宿医療専門学校校長の小倉先生、そして康本先生が講演され、
歯科における人的資本経営として、中川功一氏の研修、
最後に、エムズ歯科の荒井先生と、築山歯科の築山鉄平先生が講演されました。
このシンポジウムは、20年前に康本先生が開始されたもので、数年置きに不定期に開催され、今回で4回目となります。
日本の「定期管理型予防歯科医院」の院長が大勢参加され、修了後の懇親会は、康本先生の還暦お祝いパーティを兼ねて賑やかに開催されました。
私は20年前から参加していますが、「定期管理型予防歯科医院」という考え方が、日本の歯科界に定着したことをひしひしと感じます。
国の政策としても、歯周病重症化予防治療や、歯周病安定期治療が保険収載されるなど、予防歯科に保険点数がついています。
2次予防が歯周病重症化予防治療、3次予防が歯周病安定期治療とすれば、う蝕や歯周病にしない、1次予防についても何らかの保険による恩恵が講じられればと思います。
これから来年の診療報酬改定についての議論も中医協で深まっていきます。
歯科は、ベースアップ評価料の算定も25%と進まず、悲観的にならざるを得ない状況ですが、推移に注目していきたいと思います。
~~【セミナー案内】~~~
■令和8年度の公開セミナーのご案内です。
●新春セミナー 1月25日(日)13時30分~17時00分
会場:飯田橋レインボービル
代表 木村 泰久が、第一講座「歯科経営を取り巻く環境変化と対応方向」、第二講座「令和7年度歯科診療報酬改定の概要と対策の方向性」を分かりやすく解説します。
●M&D経営塾 6月28日(日)13時30分~17時00分
会場:飯田橋レインボービル
テーマ 「成功する歯科医院の承継を考える」
ゲスト講師:長﨑 敏宏 先生
勤務医への事業承継の体験談と成功のポイントを解説していただきます。
また、代表 木村 泰久から、歯科医師の高齢化、後継者不在の状況、そして、医院の事業承継を成功させるためのチェックポイントを解説します。
■令和8年度の歯科経営改善ゼミナールのご案内です。
実務的な内容のセミナーですので、参考にしていただけると思います。
興味のある回だけご視聴いただけますので、ぜひご検討ください。
●歯科経営改善ゼミナール(すべてWEBセミナーです)
受講料:1名様 各回6,600円(税込)
16:00~17:30または録画視聴 ※視聴期間 1か月
2月12日(木) 分かりやすい!会計と経理のポイント
3月19日(木) 分かりやすい!事業承継のポイント
4月16日(木) 分かりやすい!電話応対と話し方の基本
6月18日(木) 分かりやすい!増患対策のポイント
9月17日(木) 分かりやすい!在庫管理のポイント
10月22日(木) 分かりやすい!人事評価の進め方
11月19日(木) 分かりやすい!開業準備のポイント
●令和7年度の歯科経営改善ゼミナール(WEBセミナー)
受講料:1名様 各回6,600円(税込)
16:00~17:30または録画視聴 ※視聴期間 1か月
2025年11月20日(木)
「これがポイント!診療契約と個人情報、応召義務、カルテ開示への対応」
※歯科経営改善ゼミナール
※歯科経営改善ゼミナール DVD講座のお知らせ
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では、メルマガを始めさせていただきます。
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【メルマガの主旨】
優良な医療機関の売上向上、患者数増加は社会に役立つ使命です。
そして、売上や患者数を増やすためには、医療サービスとしてのマーケティング対策が必要です。
このメルマガは、歯科経営に絞り込んだ狭い専門領域のメルマガです。
優秀な診療技術を持ちながら、売上と患者数の減少に悩むドクター、あるいは、新規開業して早期に売上と患者数を増やしたいと考えているドクターのご参考にしていただければと思います。
みなさまのご期待に応えるため、少しでもお役に立つ内容の濃いものにしたいと考えております。
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【発行周期】 原則として、第2、第4月曜日
【発行者】 木村 泰久
(社)日本医業経営コンサルタント協会 認定登録医業経営コンサルタント
株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役
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成功する!歯科医院のマーケティング対策
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「安心できる受付づくり」 by 小山 美由紀
【目次】
1.はじめに
2.他産業でいえばどんなこと?
3.歯科医院ではどうすればよい?
4.まとめ
■1.はじめに
前回は、「患者さんとの会話」についてお話ししました。
治療説明だけではなく、日常のちょっとした一言や気遣いが、患者さんとの信頼関係を育てる─そんな内容でした。
「○○さん、前回のあの治療、調子はいかがですか?」「お子さん、運動会うまくいきましたか?」
そんな何気ない会話が、患者さんに“ここに来ると安心する”という気持ちを与えてくれます。
今回は、その“安心感”がどのように医院全体の雰囲気へとつながっていくかを、考えていきたいと思います。
診療室での技術や説明はもちろん大切ですが、患者さんが医院全体をどう感じるかは、「どんな空気の中で過ごせたか」に左右されます。その空気をつくる中心にあるのが、受付です。
受付は、患者さんが最初に医院と出会う“入り口”であり、最後に送り出される“出口”でもあります。
そこには、単なる事務処理以上の意味があります。
ほんの一言の声かけや、待合室でのちょっとした配慮が、患者さんにとって「この医院は自分を大切にしてくれている」と感じられる瞬間になります。言い換えれば、受付は“医院の印象を形にする場所”なのです。
今回は、患者さんが自然に安心できる受付づくりについて考えていきましょう。
■2.他産業でいえばどんなこと?
航空会社の「座席の気配り」
ある航空会社で国際線のチケットを予約したときのことです。
スタッフの方がこう尋ねてくれました。
「ご一緒の方とお近くのお席にされますか? それとも少し離れたお席の方がよろしいですか?」
たったこの一言で、「この人は私の状況をちゃんと考えてくれている」と感じたのを覚えています。
出張で上司と隣の席になると、気を遣って落ち着かないもの。
一方で、家族旅行なら隣同士で話をしたいですよね。
このように、お客様の立場を想像しながらさりげなく選択肢を示すだけで、「自分を大切に扱ってくれている」と感じられるのです。
もしあなたが患者さんだったら、歯科医院の受付でこのような気づかいを受けたらどう思うでしょうか?
きっと少し気持ちがほぐれて、「この医院は安心できそうだな」と感じるのではないでしょうか。
ホテルの「さりげないサービス」
あるホテルでは、真夏の暑い日に外出から戻ると、部屋のテーブルに冷たい水のボトルが置かれていました。
特別なメッセージが添えられているわけではありません。
ただ「きっと暑かっただろうな」と思って用意してくれた、その心づかいが何より嬉しかったのです。
「必要なことを言われる前に、そっと準備しておく」この“先回りの気づかい”が、お客様に強い安心感を与えます。
歯科医院でも同じです。
たとえば受付で、
「今日は少し混み合っていて、お待たせしてしまうかもしれません。ウォーターサーバーをご用意しておりますので、どうぞご自由にお使いください」と伝えるだけでも、患者さんの気持ちは大きく変わります。
忙しい一日の中で、「ここは安心できる」と感じてもらえる瞬間を、受付がつくり出しているのです。
これらの事例に共通しているのは、“相手の立場を想像すること”です。
それは大きなコストをかけることではなく、ほんの少しの言葉やタイミングの工夫です。
けれども、その小さな配慮こそが、相手の心に残る「優しさの印象」を生みます。
■3.歯科医院ではどうすればよい?
では、こうした他業界の「気づかいの工夫」を、歯科医院の受付でどう活かせるでしょうか。
「予約」「受付応対」「日常の気配り」「仕組み化」の4つの視点から考えてみましょう。
1.予約電話の対応を感じよく、選びやすく
電話での応対は、医院の印象を決める最初の瞬間。
たとえば、「その時間は空いていません」という言葉を、
「午前10時か午後3時にご案内可能ですが、ご都合はいかがでしょうか?」
に変えるだけで、相手の受け取る印象はぐっとやわらかくなります。
また、診療ユニットを「治療用」「予防用」と分けて運用すると、無理のない予約調整ができ、スタッフにも患者さんにもゆとりが生まれます。
忙しい時間帯でも、言葉選びとシステムの工夫で「落ち着いた対応」ができる─それが、患者さんに安心感を与える秘訣です。
2. マイナンバーカード受付で安心を届ける
歯科医院で導入されているマイナンバーカード受付。
今月から保険証が使えなくなり、初めて使う患者さんが増えてきます。
慣れれば便利ですが、初めて利用する患者さんにとっては少し不安な仕組みでもあります。
そんなとき、受付スタッフが一言、
「マイナンバーカードでの受付でご不明なことがございましたらお声がけください」
と声をかけるだけで、印象はまったく変わります。小さな一声が、患者さんの安心につながります。
マイナンバーカードの導入は“システム対応”であると同時に、“心のケアのチャンス”でもあるのです。
3. 日常の小さな気配りで医院の空気を整える
待合室で過ごす時間も、患者さんにとっては大切な医院体験の一部です。
・夏の暑い日には、冷たいおしぼりを用意する
・通年で使えるウォーターサーバーを設置し、自由に冷水・温水を利用できるようにする
・使用済みスリッパはアルコールで消毒し、清潔な印象を“見える形”で伝える
こうした小さな工夫は、診療技術とは直接関係がないように見えて、実は「この医院は安心できる」と感じてもらうための大切な要素です。
特にウォーターサーバーは、患者さんが“自分のペースで”利用できる安心感を生みます。
「冷たい水を飲んで少し落ち着いた」「温かいお茶でほっとできた」─そんな小さな瞬間が、医院全体の印象を優しく変えていくのです。
4. 気配りを仕組みに変える
どんなに素晴らしい対応も、スタッフ一人の“気づかい”に頼っていては長く続きません。
そのためには、
・接遇マニュアルとして文章に残す
・OJT(現場トレーニング)で定期的に共有する
といった“仕組み化”が欠かせません。
医院の文化として“気づかい”が根づけば、誰が受付を担当しても同じ安心感を届けることができます。
それが、医院全体の信頼を支える土台になるのです。
■4.まとめ
受付は、患者さんにとって「最初に出会う場所」であり、「最後に安心して帰る場所」です。
医院の“空気”を決める場所と言ってもいいかもしれません。
これまで見てきたように、受付は単なる事務処理の場ではなく、
患者さんに「ここに来てよかった」と感じてもらうための大切な接点です。
“小さな工夫”を積み重ねることで、医院全体の印象は大きく変わります。
患者さんは、治療の技術や説明の丁寧さだけでなく、
「ここに来ると安心する」「この医院の人たちは感じがいい」─そんな“空気のやわらかさ”を求めています。
それを生み出すのは、受付スタッフの笑顔や言葉づかい、そして「どうすれば患者さんが気持ちよく過ごせるか」を考える医院全体の姿勢です。
どんなに立派なマニュアルがあっても、そこに“思いやり”がなければ伝わりません。
けれど、“思いやり”が形になれば、誰が受付に立っても同じ安心感を届けられます。
皆さんの医院の受付は、患者さんにどんな気持ちを届けていますか?
そして、明日からできる“小さな工夫”をひとつ加えるとしたら、何を選びますか?
その小さな一歩が、医院の印象を変え、通い続けてもらえる関係づくりにつながります。
そして、それは患者さんの笑顔と、スタッフのやりがい、医院の安定経営─すべてに結びついていくのです。
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【発行者】医業経営コンサルタント 木村 泰久

