この4月から改正労働施策総合推進法が歯科医院にも適用され、パワーハラスメントの雇用管理上の措置が義務化されます。職場のパワーハラスメントは、働く人が能力を発揮するうえでの妨げになることはもちろん、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為です。歯科医院でもスタッフ間のいじめや、院長やお局さんからのパワハラが話題になることがありますので対策を講じておく必要があります。2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがあるとの回答は31.4%、また、都道府県労働局におけるパワーハラスメントの相談件数は1万8千件、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数も2020年度には約8万件にのぼっているそうです。

 パワーハラスメントについて厚生労働省は次のように定義しています。

「職場におけるパワーハラスメントの定義」
➀職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
➀から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。

 ただし、パワハラかどうかの判断は、普通のスタッフが同じような状況で当該の言動を受けた場合に、見過ごせないほどの支障が生じると感じるかどうか、が基準とされます。前述の3つの定義に事例を追記してみました。

①「優越的な関係を背景とした」言動:例えば、先輩スタッフが職歴の浅い後輩スタッフに対して、清掃など自分がしたくない雑用をさせたり、何かと使い走りに使ったり、自分が休みたい日に休暇の交代を強要したりするなどが考えられます。

②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動:私的な目的のための買い物の使い走りを依頼する、診療終了後にしつこく食事や飲み会に誘う、休日に仕事の電話やメールを送る、などです。

③「就業環境が害される」とは:細かく仕事の出来映えをチェックする、部下や後輩の仕事をやり直す、経験や技術力などから明らかに無理なことを命じるなどが該当します。

 パワハラかどうかの判断は、「平均的な労働者の感じ方」、つまり、「普通のスタッフが、同じような状況で当該の言動を受けた場合に、見過ごせないほどの支障が生じると感じるかどうか」が基準とされます。頻度や継続性も考慮されますが、強い身体的あるいは精神的苦痛を与える言動の場合は、1回でも該当する場合があります。

 職場におけるパワーハラスメントを防止するために、
1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発:就業規則の改定やミーティングでの周知、
2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備:相談担当者の選任など、
3)職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応:再発防止の対策の実施、
4)併せて講ずべき措置:プライバシーの保護、相談したことに対する不利益な取り扱いの防止など、産前産後・育児休業に際しての交代要員の採用など、
働きやすい職場を作るための対策を講じておきましょう。

以上