首都圏の郊外では、コロナ禍によって、ロードサイドのファミレスの廃業が相次いでいる。ファミレス跡地は事業用地として可能性が高い。駐車場台数も多く、店舗面積も広い。厨房もあり水回りの工事も容易である。大型医療法人の分院として、最初から6台以上のユニット台数で、大きなキッズスペースを中心に置いて近隣との差別化を図り、本院とのシナジー効果が期待できる場所を選んで出店すれば急成長できる可能性がある。逆に、このような大型歯科医院が近所にできると、既存の歯科医院は大きな影響を受けるだろう。

現時点で最も軒数が多いのはチェア台数3台の歯科医院、次いで4台の歯科医院で合わせて67.8%を占める。院長1人の零細な医院が多く、CTやマイクロスコープもなく常勤歯科衛生士も確保できない。「か強診」になれず、診療報酬改定の恩恵に浴せない医院が多い。片方で、6台以上のチェア台数を持ち、「か強診」となって売上高1億円以上を達成する大型医院が次々に生まれている。医療経済実態調査によれば、医療法人の売上は9450万円に達した。個人立医院の売上は4470万円で医療法人の半分以下である。

チェア台数10台以上の医院があちこちにでき、20台を超える医院も増えている。これらの大型医院では、多くの歯科衛生士を雇用して定期予防管理を実施し、大勢の勤務医を確保してインプラントや矯正などの専門治療も実施し、日曜診療や夜間診療を行なうなど圧倒的な集患力を持っている。チェア台数3台で院長1人、歯科衛生士もいない小規模歯科医院はとても太刀打ちできないだろう。

大型歯科医院が高額の医療設備を揃えたりユニットを増設したりできるのは、大型化するにつれて経営効率が向上していくからである。(公社)日本医業経営コンサルタント協会の歯科経営指標によれば、ユニット1台あたり年間医業収益は、ユニット2台以下は平均値で1640万円であるのに対して、ユニット6台以上では2200万円にもなっている。これは大型化していくにつれ色々な面で経営効率が高くなっていくからである。例えば、歯科衛生士が増えるとSPTやP重防、初期う蝕管理加算など予防歯科の売上が増えていく。技工料も材料代もかからないので収益額、収益率ともに向上する。インプラントや矯正など単価の高い歯科医療も実施できるので売上高は増えていく。さらに、顧客誘引力の法則が働く。商学の修正ハフモデルによれば、商業施設は売り場面積が大きいほど、顧客の居住地からの距離が近いほど、顧客誘引力が高くなる。歯科医院では、ユニット数や医師や歯科衛生士の数が多いほど遠くから集患できるということになる。このため大型歯科医院は地域の患者を集めてますます大型化していくだろう。

片方で、小規模歯科医院の淘汰が進んでいる。歯科医師の高齢化も進行しており、患者減少のなかで廃業に追い込まれるケースも多いとみられる。歯科医院の総数は2018年に68,800軒に達してから減少に転じており、静かに淘汰が進んでいることがうかがえる。

では、小規模歯科医院はどう対応すればよいのだろうか。有効な対策は、定期予防型に変革することである。担当制にすると歯科衛生士は1人あたり10万点の売上をあげる。技工料も材料代もかからないため採算性が高い。さらに自費率も向上する。定期予防に通う患者は口腔内に対する意識が高く、よい治療を受けたくなるからである。そして、健康な常連患者達が繰返し定期的に来院すれば新患獲得競争から逃れることができる。患者も高齢化しており、通い慣れた歯科医院に通い続けたいと考える人が多いだろう。

奪われる前に手持ち患者を囲い込む必要がある。非常勤歯科衛生士を複数募集して、シフトを組んで毎日1人は担当制で予防歯科ができる体制づくりを急ぐ必要がある。そして、できれば「か強診」をめざしていただきたい。生き残りをかけて、計画的に対策を進めていただきたいと思う。       

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