貴医院では「歯科治療時医療管理料」45点 を算定しているだろうか。

高血圧や心疾患、脳血管障害、ぜんそく、糖尿病など、基礎疾患を持つ患者に対して、血圧、脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度を診療前と診療中に測定して治療中に医学的管理をすれば、常勤歯科衛生士がいるなど一定の施設基準を満たせば算定できる点数である。

実は、今年弊社のクライアント歯科医院で医療事故が発生した。高齢の女性患者にブリッジをセットしようとしたとき失神したため、酸素を吸わせながら救急搬送したが、脳幹出血で植物状態になってしまった。この患者さんは今年の3月に形成した際に高血圧が疑われたので内科の受診を勧め、高血圧と診断されたが、コロナで緊急事態宣言がでたため感染リスクを怖れて降圧剤を受け取りに行かず、当日も服用していなかったということである。当日の治療内容はブリッジセットで、強い恐怖心や興奮、痛みがあるとは考えられないがこのような事態に陥ってしまった。通常の歯科診療でも急激に血圧が上昇する患者がいることが知られている。術前と術中に血圧と酸素飽和度を測定していれば、危険とみられる場合には処置を見合わせたりチェアから下ろして落ち着かせたりするなどの対処が可能になる。

「歯科治療時医療管理料」の算定要領は次のとおりである。

B004-6-2 歯科治療時医療管理料(1日につき)45点

高血圧性疾患、虚血性心疾患、不整脈、心不全、脳血管障害、喘息、慢性気管支炎、糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能不全、てんかん、慢性腎臓病(腎代替療法を行う患者に限る。)の患者、人工呼吸器を装着している患者又は在宅酸素療法を行っている患者に対して、歯科治療時における患者の全身状態の変化等を把握するため、患者の血圧、脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度を経時的に監視し、必要な医療管理を行った場合に算定できる。

具体的には、歯科治療時医療管理料が算定できる患者をカルテにマーキングをしておき、待合室に記録紙のでる血圧計を設置して、受付から患者さんにセルフでの血圧測定をお願いし、記録紙をもらってカルテに貼付する。チェアに導入したらパルスオキシメーターをセットし、脈拍と酸素飽和度をみえるようにしたうえで、治療直前の血圧を計測してカルテに記録するというイメージである。ただし、外科後処置、創傷処置、歯周疾患処置及び歯周基本治療、歯周病安定期治療1、歯周病安定期治療2、歯周病重症化予防治療、歯周基本治療処置は算定できない。

対象となる患者数は、図表のように人口1千人あたり、総数243人、65歳以上550人である。全患者の24.3%、65歳以上は55.0%の患者が「歯科治療時医療管理料」を算定できるということになる。(令和元年「国民生活基礎調査」)

治療前と治療中に、血圧、脈拍、酸素飽和度などバイタルサインを測定することで防止できる事故が増えると考えられる。さらに、当該患者について毎回45点を算定できるので、再診料の加算が得られるのと同じである。医療安全のためにも、医院経営の安定化のためにも、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思う。

以上